青島は、瀬戸内海の伊予灘に位置する愛媛県大洲市に属する小さな有人島です。かつての長浜町(現在の大洲市長浜地区)から約13.5km沖合にあり、急な斜面に家々が建ち並ぶ集落が形成されています。近年は人口減少と高齢化が進み、訪れる人も少なくなっていますが、「猫の島」として知られ、猫好きの観光客に人気の場所でもあります。
青島はもともと無人島で、1617年に大洲藩の馬の牧場として利用されていたことから、かつては「馬島」とも呼ばれていました。1639年、兵庫県赤穂市坂越から漁師・与七郎(後に赤城九郎左衛門と改名)一族がこの島に移住し、鰯漁が盛んな漁村として発展しました。農業には適さない地形のため、主な産業は漁業であり、特にヒジキ漁が盛んです。
1942年には889人を記録した人口も、1955年には834人、1984年には102人と急激に減少しました。2012年には16人、2019年には3世帯6人まで減少し、2024年8月時点ではわずか5人が生活しています。急速な過疎化に伴い、多くの家屋が廃屋となり、かつての賑わいは失われています。
青島には現在、自動車はもちろん、バイクや自転車もありません。宿泊施設、食堂、商店、自動販売機も存在せず、観光客にとっては少々不便な環境です。診療所も2020年3月に廃止され、医療サービスを受けるには対岸の長浜まで出向く必要があります。電気は海底ケーブルで供給され、水道用水は定期運航の旅客船で運ばれています。
青島では、毎年8月に「青島の盆踊り」が行われます。この行事は愛媛県の無形民俗文化財に指定されていますが、島民の高齢化や帰省者の減少により、2014年には一時中止となりました。その後、対岸の住民の支援により2015年には復活し、現在も地域の伝統を守るために継続されています。
かつて青島には小学校と中学校がありましたが、どちらも廃校となっています。長浜町立長浜小学校青島分校は1976年に廃校となり、長浜町立青島中学校は1966年に統合されました。小学校の建物は公民館や簡易宿泊施設として一時期利用されていましたが、現在は立ち入り禁止となっています。中学校の建物はツタに覆われ、訪問は困難です。
島の集落から徒歩約20分の場所には青島灯台があります。この灯台は、かつての繁栄を支えた漁村の象徴でもあり、今でも青島を訪れる人々を静かに見守っています。
青島は「猫の島」としても有名です。2013年の時点で、島民15名に対し、猫が100匹以上生息していることが確認され、観光客の間で「猫好きの楽園」として人気を博しました。しかし、島民の半数は猫が好きではないとしながらも、なんとなく共存していると言います。
2000年頃から猫の数が増え始め、狭い土地での近親交配や生まれつき障害を持つ子猫が問題となっていました。2018年10月、対岸の動物ボランティアや公益財団法人どうぶつ基金などの協力により、島内の全猫に対して一斉不妊去勢手術(TNR)が行われました。確認された猫の数は211頭に上り、うち172頭が手術を受けましたが、台風の影響で捕獲・手術漏れがあり、現在も完全に手術が行われていない猫がわずかに残っています。
TNR以降も、県内外のボランティア団体や個人が追加手術や病気治療に取り組んでおり、将来的に無人島化した際の猫たちの保護も視野に入れています。『青島猫を支援する会』が設立され、クラウドファンディングを通じて支援を募るなど、猫たちの将来を守るための活動が続いています。
島を訪れる際には、「青島での約束」と呼ばれるルールが設けられています。給餌の制限やゴミの持ち帰り、島民の生活を乱さない配慮が求められます。また、連絡船待合室に猫を入れないことや、立ち入り禁止区域の確認も重要です。これらのルールを守りながら、猫たちとのふれあいを楽しんでください。
長浜港と青島の間を、青島海運が1日2往復の旅客船を運航しています。長浜港は伊予長浜駅から徒歩約2分の距離にあり、片道の所要時間は約35分です。旅客船は天候により欠航する場合があるため、事前に確認が必要です。また、毎年10月頃にはメンテナンスのため運休となることもあります。
2019年10月1日から、運賃は大人片道700円、子供は半額となっています。当日の日帰りが基本で、観光客は長浜港発の便で往復券(大人1,400円)を購入する必要があります。午前便と午後便があり、午前便で青島に到着後すぐに折り返すか、午後便で1時間滞在してから戻るか選択できます。島民やその関係者が優先されるため、観光客は乗船人数に制限があります。
青島は訪れる価値のある美しい場所ですが、現在の状況を理解し、ルールを守って観光を楽しむことが大切です。