佐田岬は、愛媛県西宇和郡伊方町に位置し、四国最西端の岬として知られています。佐田岬半島の先端にあり、瀬戸内海と宇和海を隔てる要所として多くの人々に親しまれています。この岬は、九州最南端の佐多岬（さたみさき）と名前や読みが似ているため、混同されることがありますが、漢字と読みの濁音の違いから区別できます。
佐田岬は豊予海峡を挟んで九州の佐賀関半島と向かい合い、豊後水道の最も狭い部分を形成しています。この地域は瀬戸内海国立公園の一部であり、美しい景観が広がっています。佐田岬からは九州本土の佐賀関を望むことができ、その絶景は訪れる人々を魅了しています。
佐田岬周辺は、黄金碆（おうごんばえ）をはじめとする岩礁が点在しており、船舶の航行には注意が必要です。そのため、古くから海上交通の難所としても知られてきました。
岬の突端には佐田岬灯台がそびえ立っています。この灯台は高さ18メートル、灯高49メートルで、大正7年に建造されました。現在は登録有形文化財に指定されており、歴史的価値も高い建造物です。灯台へのアクセスは、麓にある駐車場から約1.8kmの遊歩道を通じて行われます。駐車場には約10台分のスペースがあり、多くの観光客が訪れるスポットとなっています。
佐田岬灯台周辺には、1924年から1945年まで豊予要塞の一部として砲台が設置されていました。これは豊後水道の防衛を目的としたもので、昭和19年には一度廃止されましたが、終戦間際には再整備されました。現在でもその跡地を見ることができ、歴史の証人として残されています。
佐田岬半島は日本列島最大の断層である中央構造線に沿っており、南西方向に向かってほぼまっすぐに伸びています。半島の幅は最も狭い箇所で約700から800メートルしかなく、独特な細長い形状が特徴です。半島の北側には瀬戸内海（伊予灘）、南側には宇和海が広がり、リアス式海岸が形成されています。
佐田岬半島は地滑り地帯としても知られており、地質的にも脆弱な地域です。半島基部には銅の鉱脈が走り、江戸時代から明治時代にかけて鉱山開発が行われてきました。八幡浜市保内町付近では、柳谷銅山などが稼働し、精錬所も設置されていましたが、鉱害問題により短期間で操業は終了しました。
佐田岬半島地域では、伝統的な民俗文化が受け継がれており、その一部は佐田岬半島ミュージアムで保存されています。特に「佐田岬半島の初盆行事」は、2010年に国の選択無形民俗文化財に指定されました。これは地域の各集落ごとに異なる姿で継承されている独特の文化行事です。
佐田岬半島への道路の整備は遅れ、旧三崎町までバスが通じたのは1960年代になってからです。それまでは、交通手段として船が主流であり、陸の孤島と呼ばれていました。現在では国道197号が半島を縦貫し、八幡浜市から三崎港までのアクセスが大幅に改善されました。
佐田岬から九州北東部の佐賀関半島へは16キロメートルの距離しかなく、最短ルートとして三崎港から佐賀関港を結ぶ国道九四フェリーが運航されています。この航路は、四国と九州を結ぶ重要な交通手段の一つです。
愛媛県と大分県を結ぶ「豊予海峡ルート」の構想は、古くから存在します。道路や鉄道を建設する計画がありましたが、膨大な建設費用が見込まれるため、現在も実現には至っていません。豊予海峡大橋（仮称）や四国新幹線のルートとしても検討されています。
佐田岬半島では、豊富な海産物が水揚げされており、岬アジ、岬サバ、イセエビ、サザエなどが名産です。さらに、柑橘類の栽培も盛んであり、みかんやレモン、柚子などが生産されています。これらの特産品は地域の産業を支えており、観光客にも人気があります。
佐田岬半島には伊方原子力発電所があり、地域の重要なエネルギー供給源となっています。発電所は、半島の風光明媚な景観の中に位置し、見学も可能です。道の駅伊方きらら館からは発電所を望むことができ、観光スポットとしても注目されています。
佐田岬は四国の最西端に位置し、美しい景観と豊かな自然、歴史的な背景を持つ魅力的な観光地です。佐田岬灯台や豊予要塞の歴史、独自の文化行事など、訪れる人々に多くの見どころを提供しています。また、豊かな水産資源や柑橘類の栽培など、地域の産業も発展しており、訪れる人々を楽しませてくれます。佐田岬半島への訪問は、四国の自然と文化を体感する貴重な体験となるでしょう。