大洲市は、愛媛県の南予地方に位置し、「伊予の小京都」として知られる歴史的な城下町です。肱川の流域にある大洲城を中心に発展したこの町は、近年その文化的な取り組みが評価され、2021年度にはグッドデザイン賞を受賞しています。観光地としての魅力が満載で、訪れる人々を歴史と自然が調和した風景で迎えてくれます。
大洲城は、2004年(平成16年)9月1日に木造で天守が復元された城で、日本100名城のひとつとしても知られています。見事に再建された天守は、当時の建築技術を感じさせ、城郭ファンにとっては必見の観光スポットです。
大洲市には多くの歴史ある寺院があります。
四国別格二十霊場7番霊場である金山出石寺は、霊場巡りの中でも重要な役割を持つ寺院です。
十夜ヶ橋大師堂は、四国八十八箇所霊場の番外札所であり、四国別格二十霊場8番霊場・永徳寺の境外仏堂です。橋の下で野宿をした空海(弘法大師)にまつわる伝承が残る場所で、巡礼者が夜を明かす姿も見られることから、巡礼の歴史を感じることができるスポットです。
瑞龍寺は、長浜町沖浦に位置する寺で、国の重要文化財に指定されている木造十一面観音立像を安置しています。毎年4月17日の祭りではこの観音像が一般に公開され、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』のロケ地としても知られています。
大洲市には歴史的建築物や史跡も数多くあります。
旧長浜町庁舎(現・大洲市役所長浜支所庁舎)は、1936年に建築された木造2階建ての洋風庁舎です。昭和初期の建築様式を残し、2000年に国の登録有形文化財に指定されました。
末永家住宅旧主屋は、1884年に建築された木造二階建ての住宅で、2003年に国の登録有形文化財に登録されました。
おはなはん通りは、1966年から翌年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『おはなはん』のロケ地として有名です。なまこ壁の家や腰板張りの土蔵群が並ぶ風情ある通りは、当時の日本の生活風景を感じさせます。
大洲市立博物館では、大洲市の歴史や文化に触れることができ、地元の文化財や遺産を学ぶことができます。
肱川あらし展望公園は、肱川河口一帯を一望できる展望台がある公園です。特に「肱川あらし」と呼ばれる現象を観察するには最適なスポットで、自然の壮大さを体感することができます。
臥龍山荘は、臥龍淵に立つ山荘で、明治時代に建てられた数寄屋造の建築物です。この美しい建物は、国の重要文化財に指定されており、日本の伝統建築の技術と美しさを感じることができます。
長浜大橋は、1935年に完成した日本国内唯一の稼働中の道路開閉橋です。1998年に国の登録有形文化財に指定され、2014年には国の重要文化財にも指定されました。肱川河口にかかるこの橋は、観光客に人気のスポットです。
肱川あらしは、秋から冬にかけて肱川河口に発生する自然現象で、冷たい空気が山間を吹き下りて川面を這うように流れる姿が特徴です。この現象を観察できる肱川あらし展望公園は、自然の雄大さを感じる絶好のスポットです。
白滝公園は、滝と紅葉の名所として知られ、特に11月23日に行われる「るり姫祭り」で賑わいます。滝の流れる風景と紅葉が織り成す景色は、訪れる人々を魅了します。
鹿野川ダムは、肱川中流に位置するダムで、1959年に完成しました。周辺には自然が広がり、散策やピクニックに最適です。
小薮温泉は、1870年代から湧き出る歴史ある温泉で、湯治場としても賑わってきました。1913年築の木造3階建ての温泉宿は、2000年に国の登録有形文化財に指定されています。長年の歴史を感じる湯治場で、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
大洲市では、鵜飼いの伝統が今もなお続いており、川の上で行われる漁法は観光客に人気です。夜の鵜飼いは特に幻想的で、一度は見ておきたい大洲市の伝統行事です。
秋の風物詩であるいもたきは、大洲市の大切な祭事の一つです。地元の食材を使った料理を楽しむことができ、地元住民と観光客が一緒に秋の訪れを祝います。
夏には、地元の伝統を感じさせる大洲まつりが開催され、街中が賑わいます。また、川を舞台にした大洲川まつり花火大会では、夜空に打ち上がる花火が観光客を魅了します。
るり姫祭りは、長浜町白滝で毎年11月23日に開催される祭りです。紅葉と滝が美しく、自然の中でのんびりと過ごすことができるイベントです。
大洲市の名産品として有名なのが志ぐれです。大洲や長浜で製造されており、特に「あこうの志ぐれ」が代表的です。
大洲和紙は、大洲市で生産されている手漉き和紙で、古くからの伝統を守り続ける工芸品です。
大洲市は肱川の中下流域に位置し、特に旧大洲地域では肱川と矢落川が合流する地点で盆地を形成しています。この地域は、山々に囲まれ、500~800mの標高のなだらかな山が連なっており、自然豊かな風景が広がっています。代表的な山々には、金山、壷神山、冨士山、神南山があり、四季折々の自然を楽しむことができます。
盆地型の地形であるため、霧が発生しやすいのが特徴です。また、冬季には寒波が訪れることもあり、雪が積もることも少なくありません。特に肱川河口(長浜)では、「肱川あらし」と呼ばれる自然現象が観察されることがあり、その独特な風景は多くの観光客を魅了しています。一方で、肱川は下流で狭まり、大雨が続くと増水しやすいという側面も持ち、過去には浸水被害が度々発生しています。
江戸時代、大洲は大洲藩に属していました。1888年には大洲城の天守閣が取り壊され、町の景観に変化が生じましたが、2004年には大洲城天守閣の復元工事が完成し、現在では往時の姿を取り戻しています。大洲城を中心に発展してきたこの町は、歴史的な建造物と風景が今も多く残っており、城下町としての風情を感じることができます。
明治時代には、大洲は全国蚕糸業大会や木蝋業者大会など、産業の中心地としても栄えました。また、昭和時代には鹿野川ダムの完成や昭和南海地震など、発展と試練が交錯する歴史をたどっています。特に2018年の平成30年7月豪雨では、肱川が氾濫し甚大な被害を受けましたが、復興の歩みを進めています。
毎年夏には大洲市で花火大会が開催され、多くの観光客が集まります。肱川の夜空を彩る花火は、城下町の風景と相まって幻想的な雰囲気を演出します。また、肱川沿いでは、船上から花火を観覧することもでき、特別な体験ができます。
秋になると、大洲市周辺の山々が紅葉に染まり、訪れる人々を魅了します。特に大洲城や臥龍山荘周辺では、美しい紅葉と歴史的建造物が一体となった風景を楽しむことができます。紅葉狩りを楽しみながら、歴史に触れることができるのは大洲市ならではの魅力です。
大洲市は、歴史と自然が調和した城下町として、訪れる人々に豊かな観光体験を提供しています。大洲城や臥龍山荘をはじめ、四季折々の美しい風景やユニークな自然現象「肱川あらし」など、見どころ満載です。歴史を感じながら、ゆったりとした時間を楽しむことができる大洲市をぜひ訪れてみてください。