愛媛県宇和島市周辺に伝わる郷土料理の一つで、めんといっても、そばやそうめんのことではない。この「ふくめん」の主役はコンニャクだ。千切りにしたコンニャクの上に魚そぼろ、陳皮、ネギなどを盛り、よく混ぜて食べる。コンニャクは空入りしてしょうゆや砂糖、みりんで甘辛く味がつけてあるのであとを引く味に仕上がっている。上に乗せる具はパッと見てもコンニャクが使われているとはわからないくらいたっぷり盛るのが特徴で、祝いの席にも欠かせない。この名前の由来も、コンニャクが見えなくなるくらい“覆面”をするからという説もある。「福面」などの縁起の良い字を当てる場合もある。
「ふくめん」は、宇和島藩の行事食として広まりました。主な材料であるこんにゃくは、こんにゃく芋から作られますが、この芋は江戸時代の飢饉の際にも収穫され、当時は食糧確保のために積極的に栽培されました。「ふくめん」の名前の由来にはいくつかの説があります。宇和島ではこんにゃくを「山ふく」と呼び、それを麺のように細く切って使用した料理だから「ふく麺」とも言われます。また、こんにゃくが見えなくなるほど、そぼろで覆面する様子からこの名がついたという説や、材料を細かく切ることを「ふくめ」という言葉からという説もあります。
ピンクのそぼろは春を、緑のネギは夏を、みかんのオレンジ色は秋を、白いそぼろは冬を表し、四季を象徴しています。この四季の色合いが使われることで、「ふくめん」はハレの日の料理として振舞われるようになりました。
「ふくめん」は祭りや正月などの宴会料理や、結婚披露宴や長寿祝いなどの特別な席で食べられます。見た目が鮮やかで、お祝いの席には欠かせない一品です。宇和島市周辺では、祝いの席に大きな器にたくさんの料理を盛り付け、皆で分け合って食べる鉢盛り料理が行われますが、その中でも「ふくめん」は重要な役割を果たします。
調理方法は以下の通りです。まず、白身魚を茹でてほぐし、鍋で調味料とともに煮ます。糸こんにゃくは茹でてから煎り、鍋で煮てから冷やします。そぼろを糸こんにゃくにまぶし、盛り付けたら仕上げにねぎとみかんの皮を添えます。
主な伝承地域:宇和島市周辺
主な使用食材:白身魚、こんにゃく