愛媛県 » 宇和島・大洲

明石寺

(めいせきじ)

明石寺は、愛媛県西予市に位置する天台寺門宗の寺院で、四国八十八箇所霊場の第四十三番札所です。寺号は「源光山(げんこうざん)」、円手院(えんしゅいん)」と称し、本尊は千手観世音菩薩です。本尊の真言は「おん ばざらたらま きりく そわか」で、詠歌は「聞くならく千手の誓いふしぎには 大盤石もかろくあげ石」と伝えられています。

寺院の概要

明石寺は、古墳時代に造られた小円墳(明石寺古墳1号から3号)が入口横の山裾にあることから、古くから開けた文明の進んだ地区であったことがわかります。また、当寺は霊場としてだけでなく、証書を有料で発行する結願所としても知られています。証書は後日郵送されます。

寺院の位置と伝説

明石寺の背後には御篠山(標高388m)があり、山頂には篠山権現が勧請されています。境内は標高約270m(本堂の位置)に広がっており、観音が乙女に化身し大岩を運んだという伝説が残る霊地です。大岩は夜明けが来たために置かれ、その後、白王権現として崇拝されました。

歴史的背景

創建と発展

『由緒覚書(1783年記)』によれば、明石寺は6世紀に欽明天皇の勅願により、正澄上人が唐からの渡来仏である千手観世音菩薩を祀るために創建されました。その後、天平6年(734年)に役行者の五代後の寿元行者が熊野から十二社権現を勧請し、十二坊を建立して修験道の中心道場となりました。弘法大師が大師御筆紺紙金泥の経を納め再興したとされています。

武士との関係

建久5年(1194年)には、源頼朝が命の恩人である池禅尼の菩提を弔うために阿弥陀堂を建立し、経塚を築いて堂宇を修繕しました。この際、山号を現光山から源光山に改めたと伝えられています。その後も、明石寺は武士からの信仰が篤く、室町時代には伊予西園寺氏の祈願所となりました。

近代における修復と再興

明治時代初期には、当寺と一体であった熊野十二社権現が神仏分離により分離され、本堂との間に柵が設けられました。昭和5年には熊野神社の拝殿と祝詞殿が建立され、現在に至ります。明石寺の本尊である千手観音像は平安時代末期の作で、重要な文化財として保存されています。

境内の施設と見どころ

本堂

本堂には本尊である千手観音坐像(平安時代末期作)が安置されており、毎年8月9日には特別開帳され、堂内の諸仏を拝観することができます。脇陣には不動明王立像と毘沙門天立像(いずれも鎌倉時代作)が並びます。外陣の天井には信徒が奉納した絵馬が天井絵として飾られ、屋根には耐寒性の高い赤褐色の石州瓦が使用されています。

大師堂

大師堂には京仏師赤尾右京が正徳2年(1712年)に製作した弘法大師像が安置されています。時折、厨子が開かれることもあり、運が良ければ拝観することができます。初めて大師堂が建立されたのは、16世紀後半とも1636年とも言われていますが、確実なのは1712年の再建です。

その他の建物

鐘楼には延命地蔵菩薩立像(江戸時代作)が安置されており、参拝者はその尊顔を拝することができます。また、境内には弘法井戸、夫婦杉、しあわせ観音石像などがあり、しあわせ観音石像は1960年に建立されたものです。さらに、源頼朝が立てたと伝わる命の恩人池禅尼の供養塔もあり、その歴史的な背景を感じることができます。

文化財と指定

国の登録有形文化財

明石寺の境内には、国の登録有形文化財に指定されている建物が9件あります。これらは、仁王門(1901年頃建築)、本堂(1890年頃建築)、大師堂(1880年建築)、地蔵堂(1909年建築)、鐘楼堂(江戸時代末期建築)、客殿(大正期建築)、手水舎(1937年建築)、石段および石垣(1916年建設)、石段および塀(1930年建設)です。

伊予遍路道と大宝寺道

2019年10月16日には、明石寺境内および伊予遍路道の一部が国の史跡に指定されました。伊予遍路道大宝寺道は、明石寺から大宝寺までの67.3kmのうち、西予市と大洲市にある箇所が含まれます。大洲市では、鳥坂峠を越えて大洲市野佐来札掛に至る約3,769mの区間が2024年2月21日に指定される予定です。

行事と宿坊

明石寺修験 採燈大護摩供

毎年2月3日には、節分を祝う行事として「明石寺修験 採燈大護摩供」が行われます。本堂への石段下と地蔵堂の間の空間で、修験者たちによって護摩供が執り行われ、信者たちが火渡りを体験します。この行事は、境内に多くの参拝者を集める伝統的な行事です。

宿坊と駐車場

明石寺には、団体専用の宿坊があり、最大30名まで収容できます。駐車場は普通車以下であれば無料で利用でき、バスは1,000円、マイクロバスは500円の駐車料金が必要です。

アクセスと参拝の流れ

明石寺の参道を進み、石段を上がると右手に本坊・納経所、左に手水場があります。山門をくぐると、右手に地蔵堂があり、さらに石段を上がると正面に本堂が見えてきます。本堂の右側には鐘楼と大師堂があり、山門手前を左に行くとトイレや弘法井戸があります。また、本坊前を通り奥の山に入ると、宇和西国三十三所の観音像が並び、最奥にはしあわせ観音が立っています。

Information

名称
明石寺
(めいせきじ)

宇和島・大洲

愛媛県