外泊は、愛媛県南宇和郡愛南町にある大字で、歴史的な漁村として知られています。この集落は「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」、「美しい日本の歴史的風土100選」、「日本の美しいむら農林水産大臣賞」など数々の賞に選ばれており、四国八十八景の44番にも選定されています。
外泊集落は、愛南町中心部から西へ突き出た西海半島の西部にある入り江に位置しています。約50軒の民家が急斜面の山の中腹にひしめき合うように建ち、その家々は台風や冬の強い季節風から守るため、高さのある石垣で囲まれています。この石垣が外泊を象徴する特徴であり、「石垣の里」として知られています。
外泊漁港からは、美しい海と熱帯性の魚種が豊富な海域を望むことができ、近くには珊瑚礁も点在しています。集落を訪れると、自然の美しさと歴史的な景観が調和した独特の風景を楽しむことができます。
外泊集落の歴史は幕末にさかのぼります。当時、隣接する中泊地区の人口が増加し、その結果、二男以下の子供たちに分家移住を提案したことから、外泊の集落が形成されました。この移住を引き受けた人々によって、新たに開拓された土地が「外泊」と名付けられました。
外泊の住民たちは、中泊の隣接する入り江の谷を埋め、屋敷地を造成し、水路を確保しました。明治12年(1879年)頃には、全戸の入居が完了し、住民たち自らの手で石垣を積み上げ、住まいを形成しました。
外泊集落では、漁業が主な産業で、男性は海に出て漁労を行い、女性は家庭で家事を行っていました。このため、台所は海を見渡せるように海側に配置され、「遠見の窓」(地元では「海賊窓」とも呼ばれる)が設けられました。この窓からは、漁の様子を確認することができ、集落の生活様式を象徴しています。
その他にも、伝説として語り継がれる「七蔵垣」や、石を祀った「屋敷神様」など、歴史的・文化的に貴重な遺産が集落内に点在しています。
近年、外泊集落の伝統的な石垣や歩道の保存を目的とした整備が進められています。これにより、観光客が増え、外泊は「石垣の里」としてその魅力を発信し続けています。外泊の景観と歴史は、訪れる人々に深い感動を与えるだけでなく、未来に向けて守り続けるべき文化的財産として重要視されています。
外泊へのアクセスはJR宇和島駅から宇和島バス「城辺・宿毛」行きに乗車し、約1時間15分で御荘に到着します。そこから「外泊」行きに乗り換え、約30分後に終点で下車、徒歩すぐの距離です。
自動車で訪れる場合、松山自動車道の西予宇和インターチェンジから国道56号線、西海道路を経由し、約1時間30分(約90km)のドライブで到達します。
外泊の観光拠点として、「だんだん館」が設けられています。これは、木造建築の食事・休憩所であり、訪れた観光客が外泊の魅力を堪能できる場所となっています。毎週火曜日が休館日ですが、それ以外の曜日には気軽に立ち寄り、外泊の歴史と自然を味わうことができます。
外泊は、その独特な景観と文化により、数多くの芸術作品にも影響を与えました。昭和40年代には、漫画家のつげ義春がこの地を訪れ、外泊の風景をイラストに描きました。この作品は「つげ義春流れ雲旅」の一部として知られています。
また、1972年に公開された松竹製作の映画『旅の重さ』のロケ地としても使用されました。この映画には、高橋洋子が主演し、外泊の美しい風景が作品の舞台として登場しています。
外泊は、歴史的な漁村としてだけでなく、その美しい石垣と自然の景観、そして住民たちの努力によって築かれた集落として未来に残したい場所のひとつです。観光地としても多くの人々を魅了する外泊は、今後も地域の歴史と伝統を守り続けることでしょう。