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遊子水荷浦の段畑

(ゆすみずがうら だんばた)

遊子水荷浦の段畑は、愛媛県宇和島市遊子に位置する急斜面に石垣を積み上げて作られた階段状の畑地です。この地域の美しい景観と歴史的価値から、2007年に「重要文化的景観」に選定されました。段畑は、農業の厳しい地形に適応して発展したものであり、半農半漁の暮らしを象徴する景観として知られています。

重要文化的景観の選定

遊子水荷浦の段畑は、2004年の文化財保護法改正により創設された重要文化的景観選定制度に基づいて、2007年7月26日に四国地方で初めて選定を受けました。選定基準は「農耕に関する景観地」として評価されました。段畑はかつて30ヘクタールもの広さがありましたが、高度経済成長期以降、耕作放棄により2ヘクタールにまで減少。しかし、選定を機に「段畑を守ろう会」が結成され、現在は約6ヘクタールにまで復元されています。

遊子水荷浦の段畑の特徴

段畑の景観

遊子水荷浦の段畑は、「宇和海のピラミッド」と称されるほど独特な景観を持っています。急斜面に石垣を積み上げ、階段状の畑が展開されている様子は、古代遺跡のような美しさを誇ります。さらに、四国八十八景の45番にも選ばれており、その景観の価値は高く評価されています。

段畑の構造

この段畑は、南予地方の宇和海沿岸にあるリアス式海岸の小さな岬に位置し、急斜面に小さな石を積み上げて作られた雛段状の畑地です。平均40度の傾斜を持つ高さ1メートル以上の石段が60段以上も連なり、最も高い場所では海抜90メートルに達します。全体で約3.4ヘクタールにわたり、1000近い段畑が広がっています。

段畑の歴史と背景

宇和島地方は、山が海に迫る地形が多く、耕地が元々少ない地域です。江戸時代にこの地域を治めた宇和島藩(伊達氏)の3代目藩主が、領民にイワシ漁を奨励する一方で、山の開墾を自由に許可したことが段畑の始まりとされています。その後、幕末の豊漁によって人口が増え、明治時代には桑畑が必要となり、大正時代にかけて石垣が築かれました。

現在の遊子水荷浦の段畑

耕作放棄からの復活

かつて、段畑ではサツマイモや麦が栽培され、特にサツマイモは焼酎の原料として九州へ出荷されていました。しかし、昭和30年代以降、農業の厳しい地形や経済状況の変化により多くの畑が放棄され、森に戻ってしまいました。それでも、水荷浦の段畑では現在でも約20戸の農家がジャガイモを育てながら保存活動を続けています。

保存活動

遊子水荷浦の段畑の保存を目的に、NPO法人「段畑を守ろう会」が結成され、地域の景観保護や観光振興を目的としたさまざまな活動が行われています。これにより、地域の伝統的な景観を維持しつつ、観光客に対して段畑の魅力を伝える努力が続けられています。

遊子水荷浦の段畑に関連するイベントと観光

ふる里だんだんまつり

毎年4月から5月にかけて開催される「ふる里だんだんまつり」は、初掘りジャガイモの即売会をメインとする収穫祭です。新鮮なジャガイモが購入できるだけでなく、地元の伝統や農業文化に触れることができる貴重なイベントとして、観光客に人気があります。

段畑ライトアップ

夏の夕涼みとして、8月から9月の期間中に1日限りで行われる「段畑ライトアップ」も魅力的なイベントです。竹とロウソクを使った幻想的な行灯で段畑を照らし出すこのイベントは、昼間とは異なる静かな美しさを楽しむことができます。

だんだん茶屋とだんだん屋

段畑で収穫されたジャガイモを使用した地元産品を提供するレストラン「だんだん茶屋」や、直売所「だんだん屋」も人気スポットです。直売所では、段畑で栽培されたジャガイモを原料にしたオリジナル焼酎「段酎」が販売されており、地元の味を楽しむことができます。

アクセス情報

交通手段

遊子水荷浦の段畑へのアクセスは、車や公共交通機関を利用できます。自動車の場合は、愛媛県道346号線を利用して到着できます。また、JR宇和島駅からは宇和島自動車蒋渕線のバスで約60分、「水ヶ浦」停留所で下車するとアクセスできます。さらに、高速船も利用可能で、新内港から盛運汽船の高速船で「水ヶ浦」に下船することができます。

まとめ

遊子水荷浦の段畑は、厳しい自然条件の中で発展した独特な農業景観を持つ場所であり、重要文化的景観として保護されています。地元の保存活動やイベントにより、地域の伝統と文化が継承されつつ、多くの観光客を魅了しています。ぜひ、訪れてその美しい景観と歴史的背景を体感してみてください。

Information

名称
遊子水荷浦の段畑
(ゆすみずがうら だんばた)

宇和島・大洲

愛媛県