松山といえば、「親譲りの無鉄砲で・・・」の書き出しでもおなじみの夏目漱石の小説『坊っちゃん』。小説の中に、「大変うまいと云う評判だから、温泉に行った帰りがけに一寸食ってみた」と登場する団子。実際に若き日の夏目漱石が旧制松山中学に教論として赴任していた頃、毎日のように通ったという道後温泉に行った帰りに、好んで食べた団子にちなんで作られたのが「坊っちゃん団子」だ。当時の団子は、1883年(明治16年)に創業した遊郭の入口にあった老舗の茶屋が出していた湯ざらし団子で、赤餡と白餡の団子を三つ串に刺したものであった。現在も和菓子屋「つぼや菓子舗」にて、素朴な味わいの「湯晒団子」を販売している。「坊っちゃん団子」は、団子が小説に登場していることを知った「つぼや菓子舗」の当時の店主が、1921年(大正10年)に坊っちゃん団子と名付け、開発したもの。北海道産しゅまり小豆100%,、北海道産大手亡豆100%など厳選した材料を使い、1本ずつ手作りしている。白双糖で練った餡は上品な甘さで、口どけもよくあとを引かない。今日では、松山市内のいくつかの製菓会社で「坊っちゃん団子」が造られていて、色の違う団子(上から抹茶・卵・小豆)を3個串刺しにしたものが「坊っちゃん団子」としては最もポピュラー。緑、黄、茶と3色のあんこでくるまれただんごをひと口ほおばると、中から真っ白なお餅が顔を覗かせる。明治の古き良き時代を忍ばせる素朴な味と形は松山土産の定番だ。