八坂寺は、愛媛県松山市に位置する、四国八十八箇所霊場の第四十七番札所です。この寺院は真言宗醍醐派に属し、熊野山、妙見院（みょうけんいん）の号を持ちます。本尊は阿弥陀如来で、伊予十三仏霊場の第10番札所としても知られています。参拝者は、八坂寺で本尊の阿弥陀如来に祈りを捧げ、心の平安を求めます。
本尊真言：おん あみりた ていぜい からうん
ご詠歌：花を見て歌詠む人は八坂寺 三仏（さんぶつ）じょうの縁（えん）とこそきけ
八坂寺の起源は、大宝元年（701年）に遡ります。伝説によれば、役行者によって開基され、文武天皇の勅願を受けた伊予の国司、越智玉興が河野玉澄の兄であったことから堂宇を建立したと伝えられています。寺名の「八坂」は、8つの坂道を切り開いて寺を創建したことに由来しており、「彌榮（いやさか）」という言葉に通じる、繁栄を象徴する名称です。
その後、寺は荒廃しましたが、弘仁6年（815年）に弘法大師（空海）によって再興されました。本尊の阿弥陀如来は源信（恵心僧都）によって作られたとされており、鎌倉時代後期の作が現存しています。
鎌倉時代後期、当地の長者である妙見尼が紀州の熊野権現を深く信仰し、熊野三所権現証誠の本地仏である阿弥陀如来を祀る社殿が建立されました。この25間にわたる長床の社殿は、多くの修験道の山伏を引き寄せ、八坂寺は修験道の根本道場として栄えました。当時は12坊、48の末寺を持ち、多くの僧兵を抱える大寺院でしたが、天正年間（1573年 – 1592年）に兵火で焼失し、その後の復興で寺域は縮小しました。
1972年に本堂の再建工事が始まり、1984年に完成。元の本堂は現在、熊野十二社権現堂として使用されています。
八坂寺の境内には、数々の見どころがあります。
山門は屋根付きの橋のような構造を持ち、単層の小型の門です。天井には22体の菩薩と阿弥陀如来が描かれ、参拝者を温かく迎え入れます。
本堂は、2034年に次回の本尊開帳が予定されていますが、2014年には特別に開帳されました。脇仏には不動明王と毘沙門天が祀られており、その荘厳な雰囲気に包まれた空間で参拝者は静かな祈りを捧げます。
大師堂では、大師像が安置されており、参拝者はその前で祈りを捧げます。堂内には、聖宝尊師坐像や二体の阿弥陀如来立像もあり、歴史的な価値が感じられます。
閻魔堂では、極楽と地獄の様子が描かれた展示があります。極楽往生通行手形と呼ばれるアイテムが授与され、亡くなった際に棺の中に納められます。
熊野十二社権現堂は、拝殿と本殿を備えた建物で、元の本堂がそのまま使われています。長い歴史を持つこの建物も、修験道信仰と熊野権現信仰の象徴です。
宝篋印塔は納経所の近くにあり、層塔は大師堂の前にあります。どちらも歴史的価値のある建造物で、参拝者に深い印象を与えます。
本堂へと続く石段の途中、10段目の左側にある「救いの手」は、九難を去る力があるとされ、多くの参拝者が祈りを捧げています。
鐘楼は、森白象による「お遍路の誰もが持てる不仕合」の句碑が対面しています。また、柴灯護摩供大祭に際して句選歌碑が並ぶこともあります。
伊予遍路道 八坂寺境内は、令和6年2月21日に国の史跡に指定されました。近世以降、境内の位置に大きな変化がなく、江戸後期の建造物である熊野十二社権現が現存しています。
八坂寺の阿弥陀如来坐像は、昭和40年に指定された県の有形文化財です。この秘仏は50年に一度しか開帳されず、その荘厳な姿は鎌倉時代後期の作です。
八坂寺には、宝篋印塔と層塔があり、それぞれ松山市の有形文化財として昭和43年に指定されました。これらの塔は、鎌倉時代の石造建築として非常に貴重な遺産です。
鉄道: 伊予鉄道横河原線の鷹ノ子駅から5.4kmの距離にあります。
バス: 八坂寺前バス停（2021年3月で路線廃止、予約制乗合タクシー化）。
車: 愛媛県道194号線に面しており、駐車場は無料で50台駐車可能です。
八坂寺は、四国八十八箇所霊場の札所巡りの途中に位置しています。
46 浄瑠璃寺（0.9 km） -- 47 八坂寺 -- 48 西林寺（4.4 km）。
八坂寺周辺には、生目神社といった札所もあり、目の病に霊験あらたかとされています。参拝後は、八坂寺から車で約0.6km進むと、生目神社を訪れることができます。