愛媛県のブランド野菜「伊予緋かぶ」と、香味豊かな「ダイダイ酢」の組み合せから生まれる「緋のかぶ漬け」。パリッとした歯ざわり、甘酸っぱい香味が魅力で、松山ではおせち料理にかかせない漬物だ。「伊予緋かぶ」は、根の表面と茎が赤いのが特徴。アントシアニンという色素を多く含み、酢と反応して鮮やかな赤色となる。10月下旬から収穫される「伊予緋かぶ」を11月から漬け込む。かぶそのものが気温15度以下で育たないと色が定着しにくいため、季節が到来しなければ作れない、まさに「自然の恵み」の色と味だといえる。
愛媛県の民謡にも登場する伝統的な漬物、緋色のかぶ漬けは、ダイダイ酢の香りと甘酸っぱい味わい、そして風味が深く、上品な仕上がりとなっています。この漬物の起源は300年以上前にさかのぼり、蒲生忠知が松山に転封された際に、先祖の地である近江国蒲生郡日野で育てられていたかぶを移植したのが始まりです。この原種である「近江の日野菜かぶ」が松山の土地に適して改良され、名物として広まりました。
緋色の鮮やかな発色は、かぶに含まれる色素のアントシアニンが酢と反応することで得られます。愛媛ゆかりの俳人である正岡子規も、「緋の蕪や膳のまわりも春景色」という句でこの漬物を詠んでいます。多くの人々に愛され、故郷を離れた人々に郷愁を誘う漬物です。
松山地域独自の漬物である「緋の蕪漬」は、おせち料理に欠かせない食材の一つであり、各家庭で受け継がれてきました。かぶの緋色が鮮やかな年は、良い年になるという言い伝えもあり、今もなお縁起物として愛されています。特に初物の赤色が鮮やかな年には、喜びの風習もあります。
調理方法は以下の通りです。まず、かぶを丁寧に洗い、皮をむきます。その後、十分な水に浸けて一晩置き、アクを抜きます。アクを抜いたかぶを輪切りにし、塩漬けして4〜5日間寝かせます。次に、だいだいを輪切りにし、しぼり酢を用意します。しぼり酢に砂糖を加え、かぶを漬け込みます。1週間ほどすると味がなじみ、美味しくなります。食べる際は好みの大きさに切ったり、千切りにしてサラダのトッピングにしたり、ご飯に混ぜたりしても良いです。酸味が苦手な方は、醤油をかけると味がまろやかになり、コクが加わります。
主な伝承地域:松山地域
主な使用食材:緋のかぶ、だいだい酢、砂糖