浄瑠璃寺は、愛媛県松山市浄瑠璃町に位置する真言宗豊山派の寺院です。寺の正式な号は「医王山 養珠院」。本尊には薬師如来を祀っており、四国八十八箇所霊場の第四十六番札所に数えられています。この寺院は四季折々の美しい花々が咲き誇ることで知られ、桜、蓮の花、牡丹、紫陽花、アカンサスなどが訪れる人々を楽しませます。
本尊真言： おん ころころ せんだりまとうぎ そわか
ご詠歌： 極楽の浄瑠璃世界たくらえば 受くる苦楽は報いならまし
浄瑠璃寺の歴史は古く、寺伝によれば和銅元年（708年）、大仏開眼を前にして布教に訪れた行基がこの地に堂宇を建立し、薬師如来と脇侍の日光菩薩・月光菩薩、そして十二神将を刻んで安置したことに始まるとされています。これが浄瑠璃寺の開基となりました。
その後、大同2年（807年）には空海（弘法大師）が訪れ、本寺を再興したと伝えられています。この再興により、浄瑠璃寺は四国八十八箇所の霊場としての重要性を高めました。
室町時代末期には、足利幕府の武将・平岡道倚（みちより）が当寺に帰依し、伽藍の整備を行いました。しかし、正徳5年（1715年）に発生した山火事により、寺は一度焼失してしまいます。その後、江戸時代中期の天明5年（1785年）、住職・堯音（ぎょうおん）の尽力によって再び復興しました。
本堂には、本尊である薬師如来像が安置されており、両脇陣には十二神将が配置されています。また、脇仏として日光菩薩・月光菩薩の立像も拝観することができます。
大師堂では、衣を着た大師像を拝顔できます。さらに、大師の誕生仏を抱くこともでき、参拝者はその優しい面持ちに癒されることでしょう。
本堂の左手には、一願弁財天堂があり、ここでは参拝者が一つの願いを弁財天に祈願することができます。
境内には弘法大師生誕1,200年を記念して設けられた仏手石・仏足石があり、これらは参拝者にとって神聖な祈りの場所となっています。
境内中央には樹齢千年を超えるといわれるイブキビャクシン（伊吹柏槙）の木があります。この木は松山市指定天然記念物に指定されており、訪れる人々に悠久の歴史を感じさせます。
弁天池の周りには広大な蓮園が広がっており、夏には古代ハスの花が一面に咲き誇ります。特に6月中旬の短い期間に、境内の北側にはアカンサスの花も咲き、美しい景観を楽しむことができます。
2023年3月20日、浄瑠璃寺の境内は「伊予遍路道」として国の史跡に指定されました。これは、長い歴史を持つ四国遍路道の一部であり、巡礼者にとって重要な場所です。
境内には、松山市指定の天然記念物として3本のイブキビャクシンが生えています。幹の周囲はそれぞれ、4.8メートル、3.5メートル、3.2メートルで、高さは約20メートルにも及びます。樹齢は600年と推定され、昭和43年10月25日に指定を受けました。
最寄り駅は伊予鉄道横河原線の鷹ノ子駅で、そこから約6.3kmの距離にあります。
以前は伊予鉄バスの「浄瑠璃寺前」バス停がありましたが、2021年3月をもって廃止され、現在は予約制の乗合タクシーが運行されています。
自動車で訪れる場合、愛媛県道194号線沿いにある浄瑠璃寺前の駐車場が便利です。駐車場は無料で、10台まで駐車可能です。
浄瑠璃寺から約4.3km下ったところに「網掛石」と呼ばれる大岩があります。この石には、弘法大師が村人たちを助けるために行った伝説が残っています。網で大きな石を運ぼうとした際、その重さで網が食い込み、結果的に石が飛び散ったという話です。
浄瑠璃寺から3kmほどのところにある「坂本屋」は、かつての遍路宿で、現在はお接待所として使用されています。テレビドラマのロケ地にもなったことで知られています。
浄瑠璃寺は、四国八十八箇所霊場の第四十六番札所であり、前後の札所は以下の通りです：
浄瑠璃寺は、歴史的な背景を持つ四国八十八箇所霊場の一つであり、自然と文化財が調和した美しい寺院です。巡礼者にとっては霊場巡りの重要な拠点であり、多くの参拝者がその静謐な雰囲気を求めて訪れます。四季折々の花々や、千年の歴史を感じさせるイブキビャクシンなど、自然の美しさとともに訪れる価値のある場所です。