興居島は、愛媛県松山港の沖合いに位置する忽那諸島の一部を成す有人島です。「みかんの島」として広く知られ、豊かな自然と穏やかな気候に恵まれています。歴史や文化、豊富な観光名所、そして美しい海岸線を持つこの島は、訪れる人々に癒しと感動を与えてくれます。
興居島は松山港の高浜港から西方約2kmに位置し、面積は9.27平方キロメートルです。島の北端には琴引鼻があり、釣島海峡を挟んで北には中島や睦月島が広がり、周囲には他の忽那諸島の島々が点在しています。中央部がくびれた特徴的な形状をしており、東側に由良湾、西側には鷲ヶ巣海水浴場が広がります。最も狭い部分では幅がわずか200メートルしかなく、「船越」と呼ばれる地区があります。
島の南部には標高282.4メートルの伊予小富士がそびえ立ち、興居島のランドマークとして親しまれています。この山は、島の形状や位置から高浜港に吹きつける北西の季節風を遮る天然の防波堤としての役割も果たしており、船舶の航行にとって重要な存在です。
興居島は、1465年（寛正6年）に大内教弘が伊予の港山城に布陣し、細川勝元の軍と戦った際の拠点となった場所です。大内教弘はこの島で病没しており、歴史的にも重要な役割を果たしてきました。近世には松山藩の領地となり、農業や漁業を基盤とする島民の生活が営まれてきました。
1944年（昭和19年）6月13日には、由利島沖で伊号第三十三潜水艦の沈没事故が発生し、興居島南西部の御手洗海岸には慰霊碑が建立されています。島の発展は明治以降に大きく進み、特に農業や漁業が主な産業として栄えてきました。
興居島には、夏の暑い日にぴったりの美しい海水浴場がいくつかあります。特に人気のあるスポットとしては、相子ヶ浜と鷲ヶ巣海水浴場が挙げられます。これらのビーチは、透明度の高い海水と美しい砂浜で、訪れる人々を魅了します。海水浴やビーチでのリラックスはもちろん、家族連れや友人同士でのバーベキューも楽しめます。
釣り愛好者にとっても興居島は魅力的な場所です。島の周囲には磯釣りの好スポットが点在しており、四季を通じて様々な魚種を狙うことができます。特に釣島海峡周辺は、魚影が濃く、多くの釣り人が訪れる場所です。
興居島の和気比売神社では、毎年秋に「船踊り」という伝統芸能が行われます。これは、海上に設けられた舞台で歌舞伎踊りを披露するもので、国選択無形民俗文化財および県指定無形民俗文化財に指定されています。この祭りは、かつて忽那諸島に本拠を置いた伊予水軍が凱旋した際に、島民に戦いの様子を伝えたことが起源とされています。
興居島へは、松山港の高浜港からフェリーでアクセスできます。株式会社ごごしまが運航するフェリーは、高浜港から泊港および由良港へとシャトル運航しており、所要時間はわずか10〜15分程度です。頻繁に便が出ているため、日帰り観光も十分に楽しめます。
島内の移動には自転車の利用が便利です。自転車を利用すれば、興居島の美しい風景や集落をゆっくりと楽しむことができます。また、徒歩での散策も可能で、各観光スポットを巡りながら自然や歴史を感じることができます。
興居島は「みかんの島」として広く知られており、農業が主な産業です。1835年（寛永4年）に由良町で桃の栽培が始まり、その後、リンゴ、ナシ、ビワ、そしてウンシュウミカンなど様々な果樹が栽培されるようになりました。特に第二次世界大戦後からは、ミカンの栽培が急速に広まり、現在では「興居島みかん」や「興居島いよかん」などのブランドとして知られています。
漁業も興居島の重要な産業の一つです。特に真珠養殖やゴカイ養殖が行われており、規模は小さいものの地域の特産品として知られています。過去には網ひび養殖も行われていましたが、現在では廃業しています。
興居島へは、松山市の高浜港からフェリーを利用して訪れることができます。フェリーは頻繁に運航しており、アクセスが非常に便利です。また、島内では自転車や徒歩で観光スポットを巡ることができます。
興居島を訪れる際は、自然や歴史を感じることができる観光スポットをじっくりと楽しむことをおすすめします。海水浴場や磯釣りスポット、伝統的な祭りなど、多彩な魅力が詰まったこの島で、心癒されるひとときを過ごしてください。また、特産の柑橘類や新鮮な海産物を味わうのも楽しみの一つです。
興居島は、豊かな自然と歴史、そして温かい人々が迎えてくれる魅力的な島です。短時間で訪れることができるアクセスの良さも魅力の一つで、四季折々の美しい風景や島の文化を楽しむことができます。ぜひ、興居島を訪れて、その魅力を体感してみてください。