今治ラヂウム温泉は、愛媛県今治市に位置する歴史的な公衆浴場施設です。2014年（平成26年）3月末に浴場は休業し、現在は閉館中ですが、その本館建築は国の登録有形文化財に指定されています。かつては町のシンボルとして地域に親しまれていました。
今治ラヂウム温泉は、瀬戸内海の大島出身の実業家・村上寛造（むらかみ かんぞう）氏によって設立されました。村上氏は1919年（大正8年）に「共楽館」と名付け、常設映画館とラヂウム温泉を同時に開設しました。その後、1923年（大正12年）頃には京町歓楽街が形成され、京町一帯（現在の共栄町3丁目、4丁目）の土地開発と店舗住宅の建設が進められました。1924年（大正13年）には「京町住宅株式会社」を設立し、さらには1933年（昭和8年）に常設映画館「第二共楽館」も開業しました。
当時、今治ラヂウム温泉は鉄筋コンクリート造の頑丈な建物であり、太平洋戦争期の1942年（昭和17年）頃には、越智郡郷土防衛隊の本部が設置されました。また、1945年（昭和20年）の今治空襲では市内の8割が焼失したものの、奇跡的に戦火を免れました。その後、空襲直後には病院や銀行などが集まる地域インフラの拠点として利用され、2階の大ホール部分は病院などの機能を果たしていました。
1951年（昭和26年）に「株式会社ラヂウム温泉」が設立され、1967年（昭和42年）には建物の3階部分を増築し、宿泊施設「ホテル青雲閣」を開業しました。その後、1988年（昭和63年）にはサウナ風呂やスチームバスなど13種類の様々な風呂を取り入れた近代型銭湯に改築されました。しかし、2014年（平成26年）3月末に浴場は休業し、その後も再開されることはありませんでした。
2016年（平成28年）11月29日には、建物が国の登録有形文化財に登録され、現在でもその姿を残しています。
今治ラヂウム温泉の建物は、1919年（大正8年）に建造され、鉄筋コンクリート造の本体中央に多角形を重ねた塔を持ち、背面には2つの白いドームを配し、中央にレンガの煙突が立っています。建築当初は映画館やダンスホールなどを備えた娯楽場でありました。独特な意匠が施され、特に建物内部の柱や幅木などのモルタル壁面には「マーブル技法」と呼ばれる大理石様の左官仕上げが施されています。この技法は、2階ホールにある階段入口や脱衣場の壁面などで見ることができます。
1967年（昭和42年）には三角屋根の建物3階部分を増築し、1988年（昭和63年）には近代型銭湯として改築されました。この際に、浴場玄関付近の構造も変更され、昔ながらの番台からフロント式に改められました。しかし、設立時期や建築家に関する詳細な資料は限られており、建物の構造など一部未解明の部分も残されています。
浴場から2階ホールに続く階段の壁面には、マーブル技法が施されており、まるで大理石のような美しい仕上がりが特徴です。このような装飾技法は、当時の日本では珍しく、欧州の建築様式との関連性も指摘されています。
建物の上部には、五角形と六角形の平面を重ねた塔屋があり、中央にはレンガ造りの煙突がそびえ立っています。これらのデザインは、建物全体に独特な外観を与えており、今治市内でもひときわ目立つランドマークとなっています。
現在、今治ラヂウム温泉は閉館中ですが、期間限定で建物公開の見学イベントなどが行われています。最新情報やイベントの告知については、公式フェイスブックおよび公式サイトを通じて確認することができます。
今治ラヂウム温泉の所在地は愛媛県今治市共栄町4丁目2番9号です。JR予讃線「今治駅」から徒歩約13分、西瀬戸自動車道（しまなみ海道）の「今治北IC」からは約3.5kmの距離にあり、駐車場も完備されています。
建物の内部は、現在は閉館しているため、通常は非公開となっています。しかし、見学会やイベント開催時には特別に公開されることがあり、その際には歴史的な建物内部を見学することができます。イベントの際には、浴場玄関や脱衣場、浴室の八角形ドーム天井など、普段は見ることのできない場所を見学することができます。
今治ラヂウム温泉は、その歴史的価値と建築美から、今後も多くの人々に愛され続けることが期待されています。建物の保存とともに、未解明の部分についても、今後の研究や資料の発見によって新たな知見が得られることが期待されています。