大三島は、愛媛県今治市に属する芸予諸島の中の一つで、愛媛県最北に位置する最大の有人島です。神々が宿る島として「神の島」とも称され、大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)が鎮座していることでも有名です。今回は、この美しい島の歴史、自然、アクセス、観光スポットなどについて詳しくご紹介します。
大三島は古くから神聖な島として知られており、伊予国風土記の逸文には「御嶋」として登場します。「大三島」の名称は鎌倉時代の文献にも見られ、これは島内にある大山祇神社を指していたと考えられています。中世には、四国八十八ヶ所の札所としても栄え、特に瀬戸内海と四国地方で隆盛を誇っていました。円明寺を火のかがり火と見立てて、大三島を巡礼する人々が多く訪れたと言われています。
江戸時代には松山藩の領地となり、大山祇神社の門前町である宮浦が発展していきました。江戸時代後期には河道付け替え工事や新田開発が行われ、宮浦はさらに賑わいを見せました。明治時代には大三島郵便局や学校が設立され、社会基盤が整備されていきました。また、昭和時代に入ると大山祇神社に宝物館が設置され、多くの文化財が保存されるようになりました。
現在、大三島は愛媛県今治市に属し、しまなみ海道の一部として本州や四国からのアクセスが良くなっています。島の人口は減少傾向にありますが、移住者も増加しており、定住率が高いことが特徴です。また、島内の観光地整備や地域振興も行われており、多くの観光客が訪れています。
大三島は瀬戸内海のほぼ中央に位置し、面積は64.54平方キロメートルです。島内には鷲ヶ頭山(わしがとうさん、標高437m)や、古代から神聖視されている「大山祇神社のクスノキ群」などの美しい自然景観が広がっています。これらの楠群は国の天然記念物にも指定されており、訪れる人々を魅了しています。
大三島の気候は温暖で、降雨量が少ないのが特徴です。島内にはかつてハゲ山が多く、植生は乏しかったものの、現在は明治以降に植林された人工林が広がっています。また、有史以前にはウバメガシやクスノキが自然植生として広がっていたと考えられており、神社や古木にその名残を垣間見ることができます。
大山祇神社は、大三島のシンボル的な存在です。島全体を神の宿る地として見立てられており、古代から多くの人々に崇められてきました。境内には重要文化財や国宝に指定されている建物や宝物が数多くあり、神社を巡るだけでもその歴史と文化を感じることができます。また、神社の周辺には旅館や土産物店、飲食店も立ち並び、観光地としての賑わいを見せています。
大三島東部の多々羅地区には、多々羅しまなみ公園があります。ここからは多々羅大橋を一望でき、その美しい景観は写真映えすること間違いなしです。また、周辺にはサイクリングコースも整備されており、しまなみ海道を通じて他の島々を巡るツアーも人気です。多々羅しまなみ公園は、自然と交通のハブとして多くの観光客に利用されています。
大三島美術館は、島の芸術文化を発信する拠点として注目されています。現代アートを中心に多くの作品が展示されており、地元作家や国内外のアーティストの作品を楽しむことができます。館内にはカフェも併設されており、ゆっくりと芸術鑑賞を楽しむことができます。
大三島には「鶴姫伝説」が伝わっています。戦国時代、大三島を守ったとされる勇敢な女性、鶴姫は、島の象徴的な存在となっています。鶴姫を題材にした観光イベントや、彼女の像が立つ鶴姫公園は、観光客に人気のスポットです。
甘崎城跡は、大三島の東岸沖合いに位置する水軍の出城跡です。天智天皇の頃、唐の侵攻に備えて建設されたと伝えられており、日本最古の水軍城とされています。今日でも、干潮時には島から歩いて訪れることができるため、歴史愛好家にとって魅力的な観光スポットです。
大三島では、みかんを中心とした農業が主な産業です。しかし、オレンジの輸入自由化などにより収益が減少し、現在ではイチゴなどの栽培も行われています。また、かつては除虫菊の栽培も盛んでありました。瀬戸内の島嶼部特有の平地の少なさと水資源の不足から、米作は盛んではありません。
大三島には、小規模ながら造船所や船体ブロック工場、縫製工場があります。また、「伯方の塩」のブランド名で知られる伯方塩業の製塩工場が近年立地しており、地域経済に貢献しています。一方で、観光業においては、大山祇神社の参道である宮浦商店街が以前ほどの活気を失っており、しまなみ海道の開通により参拝客が自動車での来訪にシフトしたことも影響しています。
大三島へのアクセスは、瀬戸内しまなみ海道を利用するのが便利です。広島県竹原市の忠海港からフェリーを利用するルートが最短で、本州からのアクセスに適しています。また、呉市から安芸灘とびしま海道を経由して岡村島まで渡り、大三島ブルーラインと今治市営渡船を使う方法もあります。これにより、本州からのアクセスがさらに充実しています。
大三島の島内は、バスやレンタサイクルを利用して移動することができます。しまなみ海道を通ることで、周辺の島々とのアクセスも容易で、サイクリングやドライブを楽しむ観光客も多いです。
大三島は、その豊かな歴史と文化、そして美しい自然環境に恵まれた魅力的な観光地です。瀬戸内しまなみ海道を利用したアクセスの良さもあり、多くの観光客が訪れています。大山祇神社を中心とした観光スポットや、自然と調和したサイクリングコースなど、様々な楽しみ方ができる大三島をぜひ訪れてみてください。