大島は、愛媛県今治市に位置する芸予諸島の一つで、面積は41.89平方キロメートルです。かつては越智郡吉海町と宮窪町の2町に分かれていましたが、2005年1月16日に今治市と合併し、現在は今治市の一部となっています。この島は、豊かな自然環境と歴史的な背景を持ち、観光名所としても魅力的です。
大島の北東部に位置する宮窪地域は、中世に瀬戸内海を拠点に活動した村上水軍(能島村上水軍)の本拠地として知られています。村上水軍の遺跡や伝承が数多く残されており、歴史好きにはたまらないスポットです。また、毎年7月には宮窪港を会場に、水軍レースなどのイベントが開催され、多くの観光客で賑わいます。これらのイベントは、村上水軍の勇壮な歴史を今に伝える貴重な機会です。
大島の南部に位置する亀老山(きろうさん、標高301.1メートル)は、来島海峡を見渡せる絶景スポットとして有名です。亀老山展望台からは、瀬戸内海や来島海峡大橋の美しい景色を楽しむことができ、特に夕暮れ時には、海と空が織りなす壮大な風景が広がります。展望台の直下には無料駐車場があり、気軽に訪れることができます。
亀老山のふもとには「道の駅 よしうみいきいき館」と「よしうみバラ公園」があり、世界各地のバラ約6,500株が植えられています。入園は無料で、春から秋にかけてさまざまなバラの花が咲き誇り、訪れる人々を魅了します。特に5月中旬の最盛期には、甘いバラの香りに包まれ、公園全体が華やかな雰囲気に満ちます。
よしうみバラ公園の隣には、1989年にオープンした「吉海郷土文化センター」があります。大島石で造られたこの建物は、「硬・鋭・朴・柔」の調和を生かし、地元の文化を紹介する施設です。館内には、島出身の洋画家・野間仁根の絵画や、村上水軍に関連する出土品、今治藩主の寄進物や武具、民具などが展示されています。
大島には、亀老山の他にも標高381.6メートルの念仏山や、標高215メートルの八幡山などの山々があり、自然散策やハイキングを楽しむことができます。特に亀老山からの来島海峡の眺望は絶景で、多くの観光客が訪れます。島の周囲には津島、鵜島、武志島、能島などの属島が点在し、それぞれが特徴的な風景を持っています。
また、来島海峡は急潮で知られ、特に四国本土との間では潮流が速く、航行が難しいことで有名です。こうした海の表情は、かつての村上水軍が巧みに活用していたと伝えられています。
大島では、農業や水産業が盛んで、特に柑橘類が名産です。名駒(なこま)地域のミカンは、甘みと酸味のバランスが良く、多くのファンに愛されています。また、宮窪港では新鮮な海産物が水揚げされ、地元の市場や観光客に人気です。
島内には造船所があり、かつては造船業も盛んでした。また、宮窪町の旧地区では、大島石の産地として知られており、墓石や建材として全国に出荷されています。大島石は、その堅さと美しい色合いから、高級石材として評価されています。
大島には、「島四国八十八ヶ所」と呼ばれる霊場巡りの文化があり、島内各地に点在する札所を巡ることができます。また、宮窪地域には、健聴者と聴覚障碍者の双方が使う「宮窪手話」と呼ばれる独特の手話文化がありましたが、近年では使用者が減少しています。
宮窪地域には、村上海賊に関連する資料を展示した「村上海賊ミュージアム」があり、歴史ファンに人気です。能島村上水軍の本拠地であった能島の城跡も近くにあり、こちらも見逃せません。
毎年7月には、村上水軍にちなんだ水軍レースが開催され、多くの観光客が訪れます。また、急潮で有名な来島海峡では、潮流体験ができるツアーもあり、迫力ある海の流れを間近で体感することができます。
大島は、本州四国連絡道路の一つであるしまなみ海道(西瀬戸自動車道)が通っており、伯方・大島大橋で伯方島と、来島海峡大橋で四国本土と結ばれています。島内には大島北インターチェンジと大島南インターチェンジの2つのICがあり、これらを結ぶ大島道路が2006年4月に開通しました。この道路のおかげで、島内の移動がスムーズになり、観光にも便利です。
大島には、下田水港、友浦港、宮窪港、吉海港、早川港など複数の港があります。かつては今治港との間にカーフェリーが運航されていましたが、現在は高速船のみが運航されています。下田水港からの高速船は、「橋より安い」をキャッチフレーズに、島内の大きな看板を掲げて利用客を呼び込んでいます。また、今治や因島、伯方島など近隣の島々へもフェリーでアクセスできるため、周辺の観光にも便利です。
愛媛県今治市の大島は、豊かな自然と歴史、文化が織りなす魅力的な観光地です。村上水軍の歴史を感じる宮窪地域や、絶景を楽しめる亀老山展望台、美しいバラが咲き誇るよしうみバラ公園など、見どころが満載です。しまなみ海道を利用して、ぜひ訪れてみてください。