しまなみ海道のおへそにある、四方を海に囲まれた岩城島。今ではレモンやみかん畑が広がる島で全国的にも「青いレモンの島」として知られるようになったが、戦後の岩城島の畑ではたくさんの「さつまいも畑」が広がっていた。飢饉に襲われることが度々あったが、瀬戸内の特有の地形もあり、平地が少なく、海に囲まれているため、水の確保が難しかったため、そんな土地でもたくさんの収穫が目指せるということで米の代わりにさつまいも栽培が盛んになっていった。さつまいもを収穫した後に船で遠くまで運ぶのに保存が効くように、芋の保存食として作られたのがこの芋菓子の始まりといわれている。細長くきったさつまいもを油で揚げ、砂糖をまぶしたもので、全国的には「芋けんぴ」と呼ばれるものに近いが、岩城島の「芋菓子(いもがし)」は芋の中心がやや柔らかいままに残っており、外はカリッと、中はホックリな味わいが楽しめる庶民の味だ。かつての岩城島では最盛期には全国の約7割ほどの芋けんぴの生産量を誇っていたが、今では芋菓子をつくるのは「タムラ食品」1軒のみ。九州の契約栽培している黄金千貫を用いて,今も昔と変わらない製法で油であげて、手作業で砂糖をまぶしただけのシンプルな味わい。季節や天気によって揚げ時間や砂糖の量を変えて作る昔ながらの手作りの職人の技は、サクッとしながらも優しい味わいに仕上がっている。