広瀬歴史記念館は、愛媛県新居浜市にある博物館です。この館は、明治維新の動乱から別子銅山を守り、さらにその近代化を推進した広瀬宰平（ひろせさいへい）の功績と生活を後世に伝えるために設立されました。館内は広瀬公園の中に位置し、展示館と旧広瀬邸から構成されています。
広瀬宰平は1828年、近江（現在の滋賀県）の北脇家に生まれました。9歳で別子銅山に勤務し、28歳の時に広瀬義右衛門の養子となりました。幕末から明治初期にかけて、彼は別子銅山の支配人や住友家の総理事を歴任し、明治新政府による銅山接収の危機からこの重要な資源を守り抜きました。
広瀬宰平は、別子銅山の近代化を積極的に推進しました。外国人技師を招き、機械化を進めるとともに、ダイナマイトの活用や日本初の山岳鉄道の導入など、採掘や輸送の効率化を図りました。彼の手腕により、別子銅山は世界的にも有数の銅山へと成長し、日本の産業発展に大きく貢献しました。
広瀬宰平は、1877年（明治10年）に居を構え、その後移築や増築を重ねて1889年（明治22年）に新座敷や庭園などを完成させました。広瀬邸は和式建築を基本としながらも、板ガラス、洋式トイレ、マントルピース、避雷針など、西洋建築の要素が随所に取り入れられています。これにより、明治初期の西洋化という新しい流れを巧みに取り入れた先見性がうかがえます。
広瀬宰平が隠居した後は、彼の子孫がこの邸宅を管理してきました。そして1970年（昭和45年）に新居浜市に寄贈され、その後大規模な調査と改修が行われました。現在、旧広瀬邸は広瀬歴史記念館として、隣接する展示館とともに一般公開されています。旧広瀬邸は、明治時代の貴重な近代建築として2003年（平成15年）に国の重要文化財に指定されました。
展示館では、広瀬宰平の生涯や業績を紹介する展示が行われています。彼の足跡や近代化の歩みを、当時の資料や映像装置を使って知ることができます。銅山での功績に加え、広瀬は諸外国を巡り、日本の近代化のために尽力しました。また、大阪商法会議所や大阪商船の設立に参画した際の記録なども展示されており、広瀬の多方面にわたる活動が紹介されています。
展示館では、広瀬宰平の歩みと日本の近代化をテーマに、以下のような展示が行われています。
また、展示品として旧広瀬邸の図面、広瀬宰平銅像の型、鉄道レール、鉄鉱石と江戸時代の製品、新居浜市の航空写真、山駕籠、手押し車、銅製弁財天像などが展示されています。
旧広瀬家住宅は、明治時代に建てられた7棟から構成されています。その中には、主屋、新座敷、離れ、金物蔵、米蔵、門番所、乾蔵、表門といった建物が含まれ、それぞれが当時の建築様式と技術を今に伝えています。これらの建物は、時代背景を物語る貴重な近代建築として、2003年に国の重要文化財に指定されました。
旧広瀬氏庭園は、明治の中頃から大正時代にかけて築造された近代庭園で、地方の庭園文化発展を示す重要な事例として評価されています。2018年2月には、国の名勝に指定され、広瀬家の庭園文化と歴史的価値が再評価されました。
広瀬歴史記念館には、その他にも以下の建物があります。
広瀬歴史記念館へは、JR新居浜駅から車で約20分、または松山自動車道の西条ICまたは新居浜ICから車で約20分でアクセスできます。
観覧料は、個人が520円（中学生以下は無料）、団体（20名以上）は420円です。開館時間は9:30から17:30までで、最終受付は17:00です。休館日は月曜日（祝日の場合は翌日）と、年末年始の12月29日から1月3日までです。
広瀬歴史記念館は、広瀬宰平の功績とその時代の産業史を学ぶ絶好の場所です。歴史的建造物や美しい庭園を楽しみながら、明治の産業革命の一端に触れることができます。ただし、見学の際は歴史的な文化財であるため、展示物や建物に触れないよう注意が必要です。また、写真撮影が禁止されている場所もあるため、事前に確認することをお勧めします。