仙龍寺は、愛媛県四国中央市新宮町に位置する真言宗大覚寺派の寺院です。号は金光山、遍照院(へんじょういん)で、本尊は弘法大師を祀っています。この寺はかつて、四国八十八箇所六十五番札所である三角寺と一体であり、その大師堂として機能していましたが、現在は独立し、三角寺の奥の院としてその役割を果たしています。そのため、「四国総奥之院」(伊予国総奥之院)とも称され、四国別格二十霊場十三番札所、四国三十六不動尊霊場二十六番札所として多くの参拝者を迎えています。
本尊真言:南無大師遍照金剛
御詠歌:極楽は 他にはあらぬ この寺に 御法の声を きくぞうれしき
仙龍寺の起源は奈良時代にまで遡ります。伝説によれば、法道仙人という修行者がこの地に住み、寺の基礎を築いたとされています。そして、平安時代初期の弘仁6年(815年)、空海(弘法大師)が42歳の時にこの地を訪れました。空海は、ここに住んでいた法道仙人から土地を譲り受け、21日間にわたる護摩修行を行いました。その修行は厄除けと虫除け、さらには五穀豊穣を祈願するもので、修行の成就後には自身の姿を彫り、これが「厄除大師」や「虫除大師」として知られるようになりました。
仙龍寺は、寛永15年(1638年)に尊性法親王が四国巡錫の際に立ち寄った場所でもあります。法親王は寺の由緒を偲び、現在の寺名である「仙龍寺」を賜りました。この由緒ある寺は、時代を超えて多くの信者に愛され続けています。
令和3年には寺の土台部分が崩れる事態が発生しましたが、大規模な修復工事により無事復旧しました。また、令和4年には、寺の本堂内にある開かれたことのない厨子が偶然にも動物により開かれ、そこから存在が知られていなかった孔雀明王像が発見されるという驚きの出来事がありました。
仙龍寺の境内は、銅山川を見下ろす美しい山中に位置し、自然豊かな環境が広がっています。崖の途中に建てられた本堂は、舞台造りの構造を持ち、下には滝が流れる壮観な景色が広がります。
本堂は昭和9年10月に竣工され、現在の姿が完成しました。正面には本尊の弘法大師像が安置されており、その右側には洞窟部分に不動明王が祀られています。弘法大師像の開帳は節分の夜と、9月最初の土曜日の夜に行われ、多くの信者が参拝に訪れます。
仙人堂には法道仙人が祀られており、弥勒堂もまた重要な施設です。これらの堂は、本堂の対面の石段を上がった場所に位置しており、訪れる参拝者はその階段を上って堂を目指します。
不動堂は、国の史跡である伊予遍路道三角寺奥之院道の途中にあり、約800メートル戻った場所に位置します。毎年5月28日には、当寺の住職により法要が行われ、この地の霊場としての役割が再確認されます。
仙龍寺への参拝は、麓の国道319号沿いにある駐車スペースから始まります。そこから石段を徒歩で約10分登ると、本堂前に到着します。参道は渓流沿いに整備されており、自然を感じながらの参拝が楽しめます。さらに、仙龍寺では完全予約制で昼御膳の提供も行っており、訪れた際にはこのサービスを利用することができます。
仙龍寺の周辺には、自然と文化が融合した貴重なスポットが数多く存在します。特に、奥之院にそびえ立つ大杉は、四国中央市指定の天然記念物として知られており、その壮大な姿は訪れる人々に深い感動を与えます。
奥之院の大杉は、通夜堂下の蟹渕のそばに自生している巨大な木で、目通り5.4メートル、樹高約40メートル、樹齢300年以上を誇ります。この大杉は、1982年11月3日に四国中央市指定の天然記念物として登録されました。
もう一つの見どころとして挙げられるのが、清滝です。この滝は、滝高30メートル、幅5メートルの大きさを誇り、1972年11月3日に四国中央市指定の名勝として登録されています。滝の周辺は、四季折々の美しい風景が広がり、特に新緑や紅葉の季節には多くの観光客が訪れます。
仙龍寺は、歴史と自然が調和した場所であり、多くの参拝者や観光客に愛されています。弘法大師の修行の場としての由緒や、歴史的な建造物、さらに豊かな自然環境が魅力です。四国八十八箇所の巡礼の途中に立ち寄る価値があるだけでなく、奥の院としての役割を果たし、多くの人々にとって信仰の場となっています。さらに、近年の修復工事や新たな発見によって、仙龍寺はますますその価値を高めています。自然と歴史に触れることができるこの寺を訪れることで、心身ともに浄化される特別な体験ができることでしょう。