笹ヶ峰は、四国山地西部に位置する石鎚山脈に属する山であり、標高1,859.47mを誇ります。この山は、日本二百名山および四国百名山の一つに数えられており、その山名は山頂部が一面のイブキザサに覆われていることから由来しています。
笹ヶ峰の山頂には一等三角点「笹ヶ峰」が設置されており、一等三角点百名山にも選定されています。山頂の東側には、全く異なる山容を持つちち山(標高1,855m)が対峙しています。かつて山頂の東側には四国電力のマイクロウェーブの反射板が設置されていましたが、1997年に通信衛星へ役目を譲り撤去されました。山頂からは西側に石鎚山、北側には瀬戸内海、南側には幾重にも重なる四国山地の山々とその向こうに土佐湾を望むことができます。
笹ヶ峰の山頂には、金剛笹ヶ峰石鉄蔵王大権現と大日大聖不動明王が祀られています。また、石鎚山や瓶ヶ森と共に「伊予の三名山」として古くから知られ、役小角や上仙法師によって開山されたとされています。奈良時代には、現在の笹ヶ峰は石鎚山と呼ばれており、新居浜市の石鈇山正法寺は石鎚権現の別当として、毎年7月には笹ヶ峰でお山開きが行われています。
また、笹ヶ峰山系の王皇山(大野山)には、大和朝廷の守護神である大神神社から勧請された大三輪神社が鎮座しています。さらに、1935年には山頂直下の紅葉谷に石鉄神社が建立されましたが、現在では社殿が倒壊し、祭祀はちち山山頂に祠が移されています。
笹ヶ峰の山腹は豊かなブナ林に覆われており、標高1,700m以下ではダケカンバが生育しています。1,700m以上ではシコクシラベやコメツツジが見られ、山頂付近にはシコクザサの群落が広がっています。また、稜線沿いにはアケボノツツジやシャクナゲの群落が点在し、四季折々の自然を楽しむことができます。
このように、笹ヶ峰には冷温帯から亜高山帯の自生植物が多く見られます。そのため、笹ヶ峰一帯の山稜部(537ha)は1982年3月に環境庁によって「笹ヶ峰自然環境保全地域」に指定されました。しかし、1955年に指定された石鎚国定公園には、豊かな自然環境を持つにもかかわらず笹ヶ峰が含まれなかった背景には、基安鉱山を稼行していた住友金属鉱山や住友林業、高知営林局の反対があったとされています。
笹ヶ峰の北側斜面には丸山(標高1,545m)の小ピークがあり、その傍には四国最大級の山小屋「丸山荘」(標高1,525m)があります。この山小屋は1933年に開業し、当初は「丸屋」と呼ばれていましたが、1951年に「丸山荘」と改名されました。
笹ヶ峰での山スキーは1936年に西条中学山岳部が初めて行い、1951年には石鎚山岳会が北斜面にスキー場を開設しました。1960年代からはスキーが盛んに行われ、1962年には「笹山荘」が竣工しました。しかし、1973年の笹山荘の焼失や、他地域のスキー場の開業により、笹ヶ峰でのスキーは次第に衰退しました。
1985年には笹ヶ峰北斜面で「笹ヶ峰レクリエーションの森」開発計画が発表されましたが、西条市民の反対運動や1987年の台風による登山道と林道の崩壊をきっかけに、計画は自然消滅しました。
笹ヶ峰への登山ルートは複数あります。西条市方面から国道194号を高知方面に向かい、下津池から林道に入ると登山口に到着します。このルートでは、丸山荘を経由して山頂に至ります。また、寒風山隧道の高知県側出口から桑瀬峠や寒風山を経て稜線を縦走するルートや、県道47号線の大永山トンネルの別子山側出口脇からちち山を経て笹ヶ峰山頂に至るルートもあります。