愛媛県 » 新居浜・西条・石鎚山

椿堂 常福寺

(つばきどう じょうふくじ)

常福寺は、愛媛県四国中央市川滝町に位置する高野山真言宗の寺院です。正式な名称は「邦治山(ほうちざん)不動院(ふどういん)椿堂 常福寺」であり、本尊は「大聖不動明王立像」と「延命地蔵菩薩立像」の二尊です。この寺院は「椿堂」の通称でも知られています。

常福寺は、四国別格二十霊場の第十四番札所であり、伊予六地蔵霊場の第六番札所でもあります。さらに、四国三十六不動尊霊場の第二十六番札所としても名高い場所です。多くの巡礼者や観光客が訪れることで知られています。

巡礼者に親しまれる常福寺

常福寺は、三角寺や仙龍寺から雲辺寺へ向かう歩き遍路道に位置しており、四国遍路の途中で多くの巡礼者が立ち寄る場所となっています。国道192号の南側に隣接しており、アクセスもしやすい場所です。

常福寺の歴史

創建の歴史

常福寺の創建は平安時代初期、大同2年(807年)に邦治居士(ほうちこじ)が地蔵菩薩を祀り、当地に庵を構えたことから始まります。この寺院は、地元の信仰や伝説に深く根付いています。さらに、弘仁6年(815年)には、空海(弘法大師)が四国巡錫中に立ち寄り、熱病の流行を抑えるために杖を地中に立て、その杖から椿が芽を出して大木となったと伝えられています。この伝説に基づいて、常福寺は「椿堂」とも呼ばれるようになりました。

再建と火災の歴史

常福寺は、何度かの火災によって移転と再建が行われました。当初は新田神社の近くにありましたが、火災により石川部落に再建され、その後も宝暦11年(1761年)に再び火災で全焼しました。その後、現在の場所に合併して復興し、「椿堂常福寺」として知られるようになりました。

幕末の安政6年(1859年)にも火災に見舞われ、寺院の象徴である椿も焼失しましたが、その後焼け跡から再び芽が出た椿が育ち、「大師お杖椿」として今でも寺院のシンボルとなっています。

常福寺の見どころ

本堂と大師堂

常福寺の本堂には、本尊である地蔵菩薩が祀られており、その姿は金色に輝いています。しかし、本堂内には真っ黒い不動明王像もあり、その厳しい姿は外からは見づらいものとなっています。本堂の両脇には阿弥陀如来立像と毘沙門天立像も祀られており、静かな空間で拝むことができます。

大師堂では、大師像が祀られており、毎月20日の午後7時から護摩焚が行われ、自由に参加することができます。また、椿堂にある樹齢300年を超える「大師お杖椿」も見逃せない見どころです。

火伏不動尊と非核不動尊

境内には、昭和31年(1956年)に建立された「火伏不動尊」がありましたが、後に核兵器廃絶を祈願し、その名が「非核不動尊」と改められました。この石像も多くの参拝者に親しまれ、平和への祈りが込められています。

おさわり大師と賓頭盧尊者像

「おさわり大師」は、椿の袂に鎮座する石造の大師像で、参拝者が自分の病気の部分を治癒するために、この大師像に触れて祈る風習があります。さらに、2024年には「賓頭盧尊者像」が境内に設置され、訪れる人々に親しまれています。

句碑と双体道祖神

境内には、著名な俳人や芸術家たちの句碑が11基もあり、その中には一系の「境内にお杖椿や南無大師」や高浜虚子の「風鈴の一ツ鳴りたる涼しさよ」などがあります。これらの句碑は、常福寺の風景や歴史を感じることができる貴重な文化財です。また、双体道祖神も境内にあり、歴史的な価値が高いとされています。

常福寺の寺宝

常福寺の寺宝として特に有名なのが、昭和25年に川端龍子が描いた「椿堂のお杖椿」という絵画です。川端龍子は65歳の時に俳人・深川正一郎と三女紀美子と共に当寺を訪れ、この絵を描きました。これは、椿堂の象徴であるお杖椿を描いた作品であり、現在も大切に保管されています。

お礼踊りと和讃

常福寺では、かつて毎年8月24日に「お礼踊り」が行われていました。この踊りは、空海の功績に感謝し、踊りながら祈りを捧げるものでしたが、大正初期からは中止されています。しかし、この伝統的な踊りは今でも地元の文化として記憶されています。和讃の歌詞は、空海の霊徳に感謝する内容が込められており、巡礼者たちにとって大切なものでした。

交通アクセス

鉄道

常福寺へは、四国旅客鉄道(JR四国)予讃線の川之江駅から約8.1キロメートルの距離にあります。公共交通機関を利用する場合、川之江駅からタクシーやバスを利用すると便利です。

バス

せとうちバスの七田線を利用し、「椿堂」バス停で下車すると、そこから徒歩約0.1キロメートルで常福寺に到着します。

車で訪れる場合、国道192号線沿いにあり、松山自動車道三島川之江インターチェンジから約7.3キロメートルの距離にあります。大型車はJAうま川滝支店向かいの有料駐車場を利用することができ、普通車は境内前の無料駐車場が利用可能です。

奥の院・成滝不動

常福寺の奥の院である「成滝不動」は、かつて寺院が火災に遭った際に本尊が避難した場所とされています。国道から急峻な参道を登ると、中腹に不動明王石像が祀られており、訪れる人々が参拝する静かなスポットとなっています。

まとめ

常福寺は、長い歴史と伝説に彩られた高野山真言宗の寺院であり、多くの巡礼者や観光客に愛される場所です。椿堂としても親しまれており、歴史的な建造物や樹齢300年の椿など、見どころも多くあります 。特に、お杖椿の伝説や火伏不動尊に代表される平和への祈りは、訪れる人々に深い感動を与えます。アクセスも良好で、四国遍路の道中にぜひ訪れたい名所の一つです。

Information

名称
椿堂 常福寺
(つばきどう じょうふくじ)

新居浜・西条・石鎚山

愛媛県