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史跡 近藤篤山 旧邸

(しせき こんどう とくざん きゅうてい)

近藤篤山旧邸は、江戸時代の朱子学者であり、小松藩の教育者であった近藤篤山が文化3年(1806年)から弘化3年(1846年)に没するまで40年にわたって過ごした屋敷です。この屋敷は、小松藩が篤山のために用意し、篤山一家が暮らしていました。藩校「養正館」での教育活動に加え、邸内には私塾「緑竹舎」および「挹蒼亭」が設けられ、教育活動を支える重要な拠点でもありました。藩主もお忍びで訪れていたと言われています。

歴史と特徴

屋敷の概要

現在の宅地面積は約627坪で、その中に屋敷の一部と庭園「五友園」が残っています。この庭園は、篤山が愛した篤山椿が美しく咲き誇る場所であり、歴史的な風情を感じさせます。屋敷の建築には面皮柱(めんぴばしら)が使用され、学者の屋敷でありながらも、数寄屋風の趣を持つ造りとなっています。これは、西条市で唯一現存する武家屋敷であり、その価値が評価され、1949年に愛媛県史跡に指定されました。

篤山の教育活動

近藤篤山は、伊予国小松藩に招かれ、藩士や領民に対する教育に尽力しました。藩校「養正館」を整備し、さらに自邸内には私塾「挹蒼亭」と「緑竹舎」を設けました。「緑竹舎」は他藩からの生徒を受け入れる施設で、広く教育の場を提供していました。また、篤山の教育姿勢は藩主や同時代の教育者からも高く評価されており、佐久間象山は篤山を「徳行天下第一」と称賛しています。

一般公開について

1949年に愛媛県史跡に指定された後、1994年に近藤家から小松町に寄贈され、1999年から一般公開が行われています。公開されている部分は、玄関、台所、居間、座敷、奥座敷、書斎、茶ノ間、祠堂などで、篤山が学問に励んだ書斎は、当時のまま保存されています。

現在の保存状態

約627坪の宅地には、現在も一部の屋敷が保存されており、学者の屋敷でありながら数寄屋風のこだわりが施された唯一の武家屋敷となっています。屋敷の周囲には庭園「五友園」が広がり、特に篤山椿が美しく咲く季節には多くの訪問者が訪れます。

見どころと展示

近藤篤山の教育精神

邸内には、篤山の教育活動や生涯を紹介する3台のモニターが設置されており、篤山の姿や教育理念について詳しく学ぶことができます。書斎には、篤山が真剣に書物を読む姿を再現した像があり、当時の学問に対する情熱を感じることができます。

庭園「五友園」

屋敷の縁側から眺める庭園は、緑豊かで静かな環境が広がり、訪れる人々に安らぎを与えます。庭園には篤山椿が咲き誇り、四季折々の美しさを楽しむことができます。

訪問情報

開館時間と休館日

開館時間は10時半から16時までで、月曜日と火曜日、年末年始、月末は休館となっています。入館料は大人200円、子供100円です。

交通案内

JR伊予小松駅から徒歩5分の距離にあり、アクセスも良好です。車の場合は、松山自動車道いよ小松ICから東へ国道11号線を約10分進むと到着します。

近藤篤山の生涯

幼少期から学問の道へ

近藤篤山(こんどう とくざん、1766年 - 1846年)は、伊予国宇摩郡小林村(現在の愛媛県四国中央市土居町)に生まれました。父は高橋甚内で、幼少期に家産が傾き、貧困の中で苦学しながら成長しました。天明8年(1788年)には弟の三品容斎とともに大坂に出て、同郷の儒学者尾藤二洲から学びました。

江戸での修学と私塾開設

寛政6年(1794年)には江戸に移り、昌平黌に入門し、尾藤二洲の教えを再び受けました。その後、別子山に戻り、寛政10年(1798年)に伊予国川之江で私塾を開設しました。

小松藩での教育活動

享和3年(1803年)、伊予国小松藩に招かれ、儒官として藩士や領民の教育に尽力しました。篤山は藩校「養正館」を整備し、自邸内には私塾「挹蒼亭」と他藩の生徒のための「緑竹舎」を設け、広く教育を行いました。

教育者としての評価

篤山は「徳行天下第一」と称されるほどの高い評価を受けていました。天保13年(1842年)には、幕府より40年以上の教育と徳行に対して表彰され、弘化3年(1846年)に81歳で没しました。

篤山の著書

篤山は生涯を通じて多くの著書を残しました。主な著書には「篤山余稿」「篤山遺稿」などがあります。これらは、篤山の思想や教育に対する考え方が記されており、今でも多くの人々に読まれています。

篤山の功績

篤山は、藩校「養正館」を整備し、教育活動に尽力しました。門戸を広く開き、領民にも学問の機会を提供したことは、彼の教育者としての徳行を示すものであり、幕府からもその功績が認められました。彼の生涯は、貧困に苦しみながらも学問に励み続けた努力と、それを周囲に還元した功績で満ちています。

まとめ

近藤篤山旧邸は、江戸時代の学者である近藤篤山の生涯や功績を今に伝える貴重な文化財です。篤山の教育理念と彼が過ごした静かな環境を感じることができるこの場所は、歴史と文化に触れたい方にとって見逃せない観光スポットです。ぜひ、足を運んでその魅力を体感してみてください。

Information

名称
史跡 近藤篤山 旧邸
(しせき こんどう とくざん きゅうてい)

新居浜・西条・石鎚山

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