愛媛県のゆべしの起源は足利時代にまで遡り、文献に見られるようになったのは、江戸時代。将軍のお祝い事の品に「柚べし」とあり、格式の高い料理で、武家の保存食として作られ重宝された。江戸時代から伝わる作り方は、砂糖、白味噌、柚子、米粉、餅粉を混ぜて蒸したという。もちっとやわらかい食感は米粉と餅粉のバランスがいいから。香りと風味を出す柚子は、愛媛県内はじめ、高知、徳島産などのものを使用する。棒状のゆべしは今でも竹皮で一つずつ包むという、伝統の味わいだ。
1867年(慶応三年)創業の老舗菓子店「星加のゆべし」は、柚子をくり抜き、その中へ砂糖、白味噌、柚子、米粉、餅粉を混ぜて、何度も蒸しあげては天日干しをくりかえすという手間と時間をかけた丸ゆべしを、西条藩主 松平左京大夫に献上したのが始まり。今でも代表銘菓となっているこの「まるゆべし」は、白味噌を使っているのが特徴で、柚子の香りとほろ苦さが、控えめな甘みと調和して、上品で滋味豊かな和菓子である。柚子の収穫期である11月から2月に約3ヶ月という長い時間をかけて、代々受け継ぐ手間暇かけた手仕事の秘伝の製法でつくれ、柚子の皮とゆべしが絶妙に馴染み、馥郁たる味に仕上がっていく。コクのある甘みと、それを押し上げる塩気が絶妙なバランス。