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西条祭り

(さいじょう まつり)

西条祭りは、愛媛県西条市で行われる秋祭りの一つで、平成16年(2004年)の市町村合併以前の旧・西条市にある4つの神社の祭礼を総称したものです。ポスターなどの表記では「西条まつり」と書かれることが多く、地元の人々に愛され続けています。

西条祭りの概要

4つの神社の祭礼

もともと西条祭りは、石岡神社(氷見・橘地区)、伊曽乃神社(神戸・大町・神拝・玉津・西条地区)、飯積神社(玉津・飯岡地区と新居浜市大生院地区)の3つの神社の祭礼を指していました。しかし近年、嘉母神社(禎瑞地区)の祭礼も含まれるようになり、4つの神社の祭礼が西条祭りとして認識されています。

それぞれの神社では異なる形式の屋台が奉納されており、石岡神社と伊曽乃神社では「だんじり」と呼ばれる屋台や御輿(みこし)が、嘉母神社と飯積神社では太鼓台が祭礼の中心となります。ただし、石岡神社では御輿のことを「太鼓台」と呼び、本来の太鼓台とは異なる使われ方をしています。

旧西条市域と周辺地域の祭礼

西条市は市町村合併により、旧西条市に加え、旧東予市・旧小松町・旧丹原町などの地域も含むようになりました。これらの地域でも、旧西条市域と同様のだんじりや御輿、太鼓台が奉納され、年々その規模は大きく、祭りはますます盛んになっています。

西条祭りの歴史

西条における屋台の発祥

西条における屋台(楽車)の歴史は、江戸時代中期からその存在が確認されていますが、その起源や発祥に関する古文書や文献はほとんど残されておらず、解明されていない点が多くあります。かつては西条の屋台の形態が京都祇園祭の山や鉾に由来すると考えられていましたが、近年の研究では、西条の屋台には祇園祭の直接的な影響はほとんどなく、むしろ大坂周辺との文化交流の可能性が高いとされています。

江戸時代中期に西条に屋台が登場した背景としては、「海上交通の発達や藩領内への貨幣経済の浸透に加え、経済力を持った西条の町衆や豪農が上方の祭礼を模倣して新しい『風流』を取り入れた」と考えられています。

氷見地区の伝承

氷見地区の祭り屋台の起源については、「石岡神社の別当寺である吉祥寺の住職が、河内国の誉田八幡宮の山車を見て帰り、これを模倣して竹で作り奉納したのが始まり」と伝えられています。この伝承については、西条地方の祭礼を研究する佐藤秀之氏が「摂陽奇観」や「河内名所図会」に記された説によるものであるとし、誤りが指摘されています。しかし、石岡神社の宮司の子孫が所有する古文書によれば、享保19年(1734年)にこの伝承を裏付ける記述が見られるため、史実とする可能性も示唆されています。

各神社の祭礼の変遷

各神社の祭礼は、神社の創建時から行われており、現在のように氏子が祭り屋台を奉納する大掛かりな祭礼行事となったのは江戸時代中期と考えられます。西条藩領内で最古の記録は、一宮神社(現新居浜市)の正徳元年(1711年)の「御用留帳」に残されており、そこには「台車(だんじり)」「御船」などが記録されています。

西条市域で最初に確認できる屋台の記録は、寛延3年(1750年)に西条藩が出した「午お書きだし」と呼ばれる倹約令です。この文書には、「伊曽乃神社祭礼の屋台宰領の者に対して、平素の身分に関わらず、裃や小脇差着用を出願によって許可する」と記されており、既に祭礼に屋台が関わっていたことがわかります。

また、宝暦11年(1761年)の伊曽乃神社の記録には、どこの町から奉納されたかは明らかではありませんが、「屋台」が登場し、現在の本町屋台である可能性が指摘されています。天明元年(1781年)には、石岡神社の行列帳に「屋台西町中」「神楽屋台土居中」の記録があり、天明6年(1786年)の伊曽乃神社の記録には、12台の屋台が記録されています。

祭礼行事の発展

天保6年(1835年)には、西条藩第9代藩主・松平頼学が106年ぶりに西条に帰国し、その年の伊曽乃神社の祭礼を観覧しました。その際に描かれた「伊曽乃祭礼細見図」には、19台の屋台や4台の御輿太鼓、船だんじり、獅子舞など多様な神輿の渡御行列が詳細に描写されており、当時の祭礼がかなり発展していたことがわかります。

この絵巻には、かつての西条の屋台が四本柱の内側に人形などの飾り物を持つ「人形屋台」として描かれており、西条祭りの歴史的な姿が浮かび上がります。また、頼学が編纂を命じた『西條誌』(1842年)には、領内の神社に奉納される台尻(だんじり)や御輿太鼓の数などが記録されており、天保年間の西条藩領の祭礼の様子が垣間見えます。

西条祭りの特色

西条型だんじりの構造

西条祭りの特徴の一つとして、西条型だんじりの存在があります。このだんじりは、2段や3段の構造を持ち、鳴り物の配置も異なります。あるものは内部の中央部に太鼓と鉦を配置し、他のものは画像のように配置されるなど、だんじりの内部構造にも地域や時期によって違いがあります。

御輿の種類と装飾

西条の御輿(みこし)は、練り歩きの際に見られる素木、黒塗り、朱塗りの3種類のだんじりや、提灯を取り付けた夜間の姿があり、それぞれが異なる美しさを見せます。また、初期の西条祭り屋台のモデルとなった誉田八幡宮の祭車の姿も伝えられており、現在の御輿の原型が伺えます。

指定文化財としての西条祭り

西条祭りそのものが『西条まつりの屋台行事』として、西条市の指定無形民俗文化財に指定されており、地域の文化や伝統の保存に大きく貢献しています。また、昭和47年には、伊曽乃神社の屋台行事が愛媛県の無形民俗文化財に指定され、祭礼全体の保存活動が積極的に行われています。

西条祭りの見どころ

だんじりの競演

西条祭りの最大の見どころは、だんじりの競演です。だんじり同士が激しくぶつかり合い、迫力ある競演を繰り広げます。特に「川入り」と呼ばれる、だんじりが川に入り込み水をかけ合う光景は圧巻で、多くの観光客を魅了しています。

御輿の練り歩き

西条祭りでは、御輿が町中を練り歩き、勇壮な姿を披露します。御輿の上には華やかな装飾が施され、夜になると提灯に照らされて幻想的な雰囲気を醸し出します。観光客はこの華やかで迫力ある行列を間近で見ることができ、祭りの熱気を肌で感じられます。

まとめ

西条祭りは、愛媛県西条市の秋を彩る一大イベントであり、地元の人々にとっては欠かせない伝統行事です。だんじりや御輿の競演、川入りなどの見どころは、観光客にも大きな感動を与え、毎年多くの人々が訪れます。西条祭りは、地域の文化や歴史を深く知ることができる貴重な機会であり、その魅力を多くの人々に伝えていきたいものです。

Information

名称
西条祭り
(さいじょう まつり)

新居浜・西条・石鎚山

愛媛県