慈眼寺は、愛媛県新居浜市西の土居に位置する曹洞宗の寺院です。この寺院は、滝の宮公園のある金子山の東側に隣接しており、その歴史は古く、地元の人々に深く根付いています。
慈眼寺の歴史は、鎌倉時代に遡ります。源平の争乱において活躍した武将、金子家忠は、その戦功により伊予国新居郷などの領地を賜りました。家忠の5代目の子孫である金子頼広は、弘安6年(1283年)頃にこの地に下向し、当地の支配を始めました。頼広は現在の慈眼寺がある場所に館を築き、金子山の山上には詰城として金子城を築きました。そして、北側の山麓には家族の菩提寺として、慈眼寺の前身となる寺院を建立しました。
応永13年(1406年)には、当時の宗派であった臨済宗寿福寺派の寺として堂宇が再建されました。しかし、時代は下り、天正13年(1585年)に豊臣秀吉の四国攻めがありました。この戦いで、当時の伊予金子氏当主であった金子元宅は討ち死にし、寺院も戦火により焼失しました。弟の金子元春は金子城の落城後、今治の大雄寺へ逃れましたが、出家を決意し僧となりました。
元春は「関奄本徹(かんえんほんてつ)」と名乗り、修行を積んだ後、再び新居郷に戻り、かつての館跡に曹洞宗の寺院として慈眼寺を建立しました。このとき、寺号を「松樹林正法山慈眼寺」と改めました。元春は当時から名僧として知られ、明正天皇から綸旨を賜るほどの名声を得ていました。さらに、皇室の紋章である十六葉八重表菊(16弁の菊の御紋)も授けられ、皇室との深い縁を持つこととなりました。
慈眼寺の山門は、寺院への入り口として風格のある構えを見せています。この山門をくぐると、境内の静寂な雰囲気が訪れる者を包み込みます。
本堂は慈眼寺の中心的な建物で、厳かな佇まいを見せています。本堂では、日々の修行や法要が行われ、多くの参拝者が訪れて祈りを捧げています。
慈雲閣は、二階建ての建物であり、二階部分は宝物館として開放されています。ここでは、寺に伝わる貴重な文物や美術品が展示されており、慈眼寺の長い歴史を感じることができます。
大広間は、訪れた人々が庭園を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごせる場所です。庭園の四季折々の風景を楽しむことができ、心を和ませる空間となっています。
慈眼寺では、春と秋の一定期間に一般公開が行われます。この期間中は、本堂の内覧や美しい庭園の散策が可能です。入場料は300円で、さらに抹茶やぜんざいを楽しむセット、宝物館の観覧セットも追加料金で利用できます。庭園を眺めながらの一服は、訪れる者にとって特別な時間となることでしょう。
慈眼寺の庭園は、手入れの行き届いた美しい景観が特徴です。庭園は本堂や大広間からも眺めることができ、四季折々の風情を楽しむことができます。特に、春の桜や秋の紅葉は見事で、多くの人々がその美しさに魅了されています。
慈眼寺は、歴史的な背景を持ちながらも、訪れる人々に心の安らぎを与える場所です。その伽藍や庭園、歴史的な遺産は、地元の人々だけでなく、多くの観光客にも愛されています。静かで厳かな雰囲気の中で、慈眼寺の歴史や文化を感じながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるでしょう。
慈眼寺は、新居浜市の中心部からほど近く、滝の宮公園からも徒歩圏内に位置しています。公共交通機関を利用する場合は、新居浜駅からバスでアクセス可能です。車で訪れる際には、寺の周辺に駐車場も完備されているため、便利です。
慈眼寺は、歴史的な価値や美しい自然、そして静寂な空間が調和した魅力的な寺院です。訪れるたびに新たな発見があり、心を癒す場所として、多くの人々に親しまれています。ぜひ一度、慈眼寺を訪れ、その歴史と自然の美しさに触れてみてください。