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前神寺

(まえがみじ)

前神寺は、愛媛県西条市洲之内に位置する真言宗石鈇派の総本山です。石鈇山(いしづちさん)、金色院(こんじきいん)の号を持ち、本尊は阿弥陀如来です。前神寺は、四国八十八箇所霊場の第六十四番札所であり、日本七霊山の一つである霊峰石鎚山の麓に位置しています。石鎚山は標高1982メートルの西日本最高峰として知られ、その霊力と歴史的背景が、この地を霊場としての価値を高めています。

ご本尊とご真言

前神寺の本尊である阿弥陀如来のご真言は「おん あみりた ていぜい からうん」で、衆生を苦しみから救済する仏様とされています。ご詠歌は「前は神、後(うしろ)は仏、極楽の よろずの罪をくだく石鈇」と謳われています。

歴史と由来

役行者と石鎚山

前神寺の歴史は古く、役行者(役小角)が石鎚山で修行したことに始まります。役行者が石鎚山の頂上を目指した際、その険しさに一度は挫折しかけましたが、斧(鈇)を磨く老人と出会い、「これを針にする」との言葉に励まされ、再び頂上を目指しました。その後、釈迦如来と阿弥陀如来が合体した石鈇蔵王権現を感得し、そこから前神寺の歴史が始まったと伝えられています。

平安時代からの発展

その後、平安時代に桓武天皇が病気平癒の祈願を成就したことから、前神寺は七堂伽藍を備えた勅願寺となり、「金色院前神寺」の称号を賜りました。また、弘法大師空海も若い頃に石鎚山で修行を行い、後年当寺を巡錫したとされています。多くの天皇や徳川家の崇敬を受け、前神寺は隆盛を極めました。

江戸時代の変遷

江戸時代には、札所としての便宜を図るために、山麓に里前神寺を設置し、これが現在の石鎚神社口之宮本社の位置となっています。真念の『四国遍路道指南』や寂本の『四国遍礼霊場記』には、奥前神寺が壮大な伽藍を有していたことが記されています。

神仏分離と前神寺の再興

明治初期の神仏分離令により前神寺は一時廃寺となりましたが、1889年に復興し、現在の姿に至っています。その後、前神寺は石鎚山登山の拠点としても栄え、昭和22年(1947年)には御室派から独立し、真言宗石鈇派の総本山となりました。

境内の施設と見どころ

本堂

前神寺の本堂は、入母屋造で青銅の屋根が特徴的です。本尊は阿弥陀如来であり、秘仏として崇められています。また、本堂には四国(東予)七福神の一つ、寿老人が合祀されています。

石鈇権現堂

石鈇権現堂には、石鎚山の蔵王権現が祀られており、毎月一度開帳されます。この三体の権現像は特に加持され、病気平癒のご利益があるとされています。

その他の施設

前神寺の境内には、薬師堂や護摩堂、お滝不動など多くの施設があります。特にお滝不動では、かつて滝打ち修行が行われており、現在もその跡が残されています。また、大師堂には全身真っ黒の弘法大師像があり、玉眼を持つこの像は不定期で拝観可能です。

行事と祭事

権現様の縁日

毎月20日には権現様の縁日が行われ、石鈇権現堂にて3体の蔵王権現が開帳されます。この日は、体の悪い部分を権現像にこすりつけて病気平癒を祈願する習慣があります。縁日の最後には護摩堂にて護摩祈祷が行われます。

石鎚山の山開き

毎年7月1日から10日間にわたり、石鎚山の山開きが行われます。6月30日には前神寺本堂前で柴燈護摩が行われ、7月1日からは石鎚山の奥前神寺で護摩祈祷が焚かれます。この期間中には、特別な御開帳を受けることができます。

文化財と指定書跡

西条市指定の文化財

前神寺には、西条市指定の文化財として「石鎚修験道に関する古文書」が保管されています。この文書は約200年前のもので、昭和51年に指定を受けました。

アクセス情報

前神寺には駐車場が整備されており、普通車30台、大型車5台が無料で利用可能です。また、境内には杉や檜の木立が生い茂り、深山幽谷の風情が漂っています。訪れる際には、この自然豊かな環境を楽しみながら、歴史ある寺院の雰囲気を感じることができるでしょう。

Information

名称
前神寺
(まえがみじ)

新居浜・西条・石鎚山

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